ちった図書室 ~Bibliothèque de Cittagazze~

手当たり次第に読んだ本を手当たり次第に記していこうという、意気込みだけは凄い図書室。目指すは本のソムリエです。

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『黒蜥蜴』(戯曲)

面白い!!
江戸川乱歩の原作から一歩踏み込んで、「女賊・黒蜥蜴」と「探偵・明智小五郎」の“知られてはいけない恋”が主軸に置かれている。
ケレン味をたっぷり利かせて、芝居としての妖しさを引き立てる。

三島由紀夫が楽しんで書いたというのが伝わってくるなぁ。
もちろん、原作ありきの大胆な演出なのだけれど、こうも味付けが変わるとは!

また、刺青の「黒蜥蜴」の理由も明らかになっている。
これがまた素敵!

組織内の階級の最上位が「爬虫類の位」なのである。
黒蜥蜴に認められる最上の誉れ。
“女王の気高さ”が刺青と夫人に宿る。

そして少女のような恋心と、女王の恋情。

でも心の世界では、あなたが泥棒で、わたしが探偵だったわ。

このセリフ、舞台で聞いてみたかったなぁ……。



さて、実は本書は戯曲に止まらない。

収録されている座談会、その名も「狐狗狸の夕べ」
このまま読んで大丈夫か?
呪われないか?


LvE

さあ、どうする?
どうする!?
……思わず『レベルE』のクラフトさんになってしまった。


だって、メンバーが凄い。

江戸川乱歩、三島由紀夫、芥川比呂志、杉村春子、松浦竹夫、山村正夫。

すでに、なんかでてる。
でてるでしょ。

ミステリ座談会なのに何故か怖いものの話になって、そのまた何故かコックリさんを始めてしまうのである。
まさに、「予想の斜め上をいく」を体現しているではないか!

三島が内田百閒の 『サラサーテの盤』 をしきりに怖がっているのもなんだか面白い。

この対談では何の反応もなかったらしいのだが、さしものコックリさんもビビッてでられなかったのではないかと思う。

他にも美輪様こと美輪明宏との対談など「三島版・黒蜥蜴」がぎっしり詰まった濃厚な一冊。
宝石「エジプトの星」より価値のあるお宝だ。





| 三島由紀夫 | 15:47 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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『黒蜥蜴』

小学校から帰ってくると、天知茂氏の演じる明智小五郎がバリバリっと変装を解いていたのを思い出す。
ちょうど再放送の時間だったらしく、来る日も来る日も明智小五郎と美女とが鏡の回廊などの妖しい場所で対決していた。
そんなこんなをサブリミナル効果のごとく叩き込まれ、それは私の一部になってしまった気がする。

その美女の一人に、きっと緑川夫人こと「女賊・黒蜥蜴」も存在したのだろう。
美しいものを子供のように愛し、欲しがる。
かくれんぼに興じながら小さな虫の羽をむしり取る事に楽しささえ感じる、無垢な子供の怖さを兼ね備えた女。


「(略)あたしの目的はお金ではないの。この世の美しいものという美しいものを、すっかり集めてみたいのがあたしの念願なのよ。宝石や美しい人や……」

「え、人間までも?」

「そうよ。美しい人間は、美術品以上だわ。(略)」



ダメだっ!
後半が「綺麗」より「気持ち悪い」になってしまってダメだった。
私のなかでは美しさよりもグロテスクの方に傾いてしまう。
というか、冒頭の裸踊りからワケワカラン。
私が乱歩を読み慣れていないからだろうか。
刺青が「黒蜥蜴」なのも理由が分からない。

では、どんな刺青なら納得するかしら、と考える。

……黒い揚羽蝶ではどうだろう?
我が家の庭には夏になると必ず来ては翻弄するように飛び回って、いくつもの花の蜜を吸っていく。
他の蝶にはない大胆さがある。
そして、黒い羽の下の方には血の様な赤い斑紋。

「女賊・黒揚羽」の方がいいなぁ。
生意気な思いと共に庭を眺め、また本に目を落とした。





| ミステリ(国内) | 06:14 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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『幼年期の終り』

「あなたは自分のお部屋にいらっしゃい。どうしてって?だって、それが一番安全だもの。そうでしょう?」

ゲームをしながらママの手づくりのお菓子を食べて、本を読んで。
ママに取り上げられちゃったゲームもあるけど、その方がいいのかな。
悪口を言うクラスメイトもいない。
勉強だって、無理にしなくていい。
ママに言えば一番良い方法を全部教えてくれる。

……でも、どうして?



始めは良かった。
地球に飛来した宇宙人はなんでも与えてくれて、問題の解決方法を優しく教えてくれる。

与えられた“非日常”への高揚感にワクワクした。
しかし、次第に居心地の悪さを感じるようになる。
全てを管理されて、刺激のなくなった“日常”への退屈。

そして湧き上がる“疑問”。
どうしてそこまで守られなければいけないのか?

「ママはあなたが羨ましいわ。あなたには未来があるもの。そうでしょう?」

未来?
どんな未来?
あれ、おかしいな。
みんな何処かに行くみたいだよ。
ホラ、お隣の子も、お向かいの子も。
私は行っちゃダメなの?

「残念だけれど、あなたは歳がいきすぎているから行けないの」

どうして?

「パパがそう決めたから。ママだって本当は行きたいのよ」



与えられたのは“平和”ではなく、“隷属”ではなかったか。
他の介入でコントロールしようとするのは、プリミティブな文化への否定ではないだろうか。
今まさに、ジャングルの奥地で行っていることと同じなのではないだろうか。


本作はどうもキリスト教思想が強すぎる様に感じる。
クラークの宗教観から見て、キリスト教へのアンチテーゼなのではないのかと思うのだがどうだろう。
なかなか消化できずにいる。







2017年、新訳地球幼年期の終わり【新版】 (創元SF文庫)が発行されました。
他に幼年期の終わり (光文社古典新訳文庫)も2007年に発行されています。

私が書いたレビューは1979年発行の福島正実氏訳の幼年期の終り (ハヤカワ文庫 SF (341)です。

福島氏のノスタルジックで温かみある文体がとても好き。

| SF | 20:06 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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『ファントム』

歳の離れた姉妹、ジェニーとリサ。
ジェニーが医師として開業している小さくて穏やかな町、スノーフィールド。
母親が亡くなった事を切っ掛けに、二人はそこで新しい暮らしを共に始めるはずだった。
年齢と同じくらい離れてしまっていた年月を、ゆっくりと埋めていく。
相性はバッチリ。
滑り出しは上々。
車の中での会話も弾み、楽しい生活の予感に包まれる。

しかし、リサを連れて帰ったスノーフィールドの町からは、忽然と人間が消えていた。
いや、ただ消えたのではない。一夜にして「あらゆる命」が消えていたのだ。
医師であるジェニーはまず、病原菌などの生物災害「バイオハザード」を疑うが、調べていくうちにその可能性は消えていく。

死体は、あったり無かったり。
恐怖と驚きに満ちた顔がオーブンに入っていたり……。
これが「災害」であるはずがない。
警察が到着してホッとしたのも束の間……更なる恐怖が襲い掛かる。

ジェニーは医師だけあって肝が据わっている。
妹を守らなければ、という想いもある。
例え遺体が親しい友人や知人だとしても、その想いがジェニーを支える。
そんな姉を尊敬し、自分を奮い立たせるリサ。
二人の心情が痛いほど伝わってくる。

駆け付けた保安官、ブライスのキャラクター作りがまた巧みで、たちまち頼りにしてしまう。

隔絶された町で起こる群像劇。
少しずつ明らかになる「敵」の正体。
「敵」からの要求。
そして……。


ページを捲るのももどかしい、と思う本はあるけれど、『ファントム』は“瞬きするのももどかしい”本だった。
緩急のつけ方が流石はクーンツ!
怖かったぁぁ……!





| ディーン・R・クーンツ | 19:29 | comments:2 | trackbacks:0 | TOP↑

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