ちった図書室 ~Bibliothèque de Cittagazze~

手当たり次第に読んだ本を手当たり次第に記していこうという、意気込みだけは凄い図書室。目指すは本のソムリエです。

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『日の名残り』

「まあ、ミスター・スティーブンス。あなたは執事としては老練でも、心はティーンエイジャーですのね!」

心を浮き立たせながら旅する“品格”ある紳士に、こう声を掛けたくなった。

尊敬する主人に仕えたダーリントン・ホールでの年月。
ダーリントン卿のもと、国内外への会議に、歴史に携わったという自負。
その裏方である役割と同時に受け止めた父の死。
ミス・ケントンとの「ココア会議」。

ミスター・スティーブンスは、そんな日々のなか本当に自分の気持ちに気付かなかったのだろうか。
……いや、そうではないだろう。
彼のなかで「ミス・ケントン」は「ミス・ケントン」として存在し続けていたのだから。

まるで子供が空いたクッキー缶に宝物をしまい込む様に、大切に大切にしていたのだろうと思う。

その宝物が、自分の価値観や信じてきたものが壊れてボロボロになる感覚を私も知っている。
心がぎゅうぎゅう痛くて、自責の念に駆られるあの感じ。

だから本を閉じながら今度はこう声を掛けたい。

「まあ、ミスター・スティーブンス。あなたは執事としては老練でも、心はティーンエイジャーですのね!でもそれは悪い事ではありませんわ。ティーンエイジャーの良いところは、可能性に恵まれているっていうことですもの。……それに、ほら。日が落ちたあとは明るい月が昇ってきましてよ」






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