ちった図書室 ~Bibliothèque de Cittagazze~

手当たり次第に読んだ本を手当たり次第に記していこうという、意気込みだけは凄い図書室。目指すは本のソムリエです。

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『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』

「ご注文はひつじですか?」

そんな問い合わせを受けるのは、ペットショップか、はたまた機械のペットショップか。

勝者も敗者も、そもそも原因がなんだったのか忘れ去られた最終戦争の後。
地球には戦争の名残である放射能灰が降り続いていた。
死の世界を作った人類は、とっとと地球を捨て火星へ移住。

わずかに残った地球人の間では、生きたペットを飼う事が最高のステータスになっていた。

地球居残り組のリック・デッカードの仕事はアンドロイドを狩るバウンティ・ハンターだ。
賞金稼ぎのお巡りさん、と妻に揶揄されながらも着実に仕事をこなし、本物の動物を飼う事を夢見ている。
彼の羊は電気仕掛けのロボットだったから。

地球のルールはいたってシンプル。
命あるものには生を。
命なきものには破壊を。

人間が持つ素晴らしさである「共感力」「感情移入力」がアンドロイドにはない。
それがアンドロイドを見分ける方法だ。

しかし……。
ラストで描写なくとも視える、怒りに満ちた瞳はなんだろう。
燃え盛る様に髪をなびかせて立つ姿が、強く睨みつける瞳が、主人公と共に読者の心をも惑わす。

この恐ろしい世界で、唯一「まとも」だと感じたのは、落伍者の烙印を押されたジョン・イジドアだけだった。

生命とは何か。
人間とは何か。
心とは何か。

作者フィリップ・K・ディックの問いかけは鋭く、重い。

そして思う。
共感力と感情移入力が人間である証明ならば、昨今報道される、特に弱者を殺める人間たちはアンドロイドなのではないか、と。
それも、かなり狂ったアンドロイド……。






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