ちった図書室 ~Bibliothèque de Cittagazze~

手当たり次第に読んだ本を手当たり次第に記していこうという、意気込みだけは凄い図書室。目指すは本のソムリエです。

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『恐怖の愉しみ』(下)

「そうなの、あたしね、幽霊を見たことがあるのよ。ほんとのこというとね、かなり長いこと、ある家であたし、その幽霊さんといっしょに暮らしていたのよ」 

上記は本書収録の「一対の手 ― ある老嬢の怪談 ―」からの抜粋。
特に好きな序盤の一文を書き出してみた。
その「幽霊さん」との暮らしを、そしてラストの温かさを、是非お読みいただきたい。


下巻は怖い話と、温かみのある話の差が大きいように思う。
「どっちだろう」と思いながら読む。そこがまた面白い。


「失踪」 ウォルター・デ・ラ・メア
「色絵の皿」 マージョリ・ボーエン
「壁画のなかの顔」 アーノルド・スミス
「一対の手 ― ある老嬢の怪談 ―」 アーサー・キラ=クーチ
「徴税所」 W・W・ジェイコブズ
「角店」 シンシア・アスキス
「誰が呼んだ?」 ジェイムズ・レイヴァー
「二人提督」 ジョン・メトカーフ
「シャーロットの鏡」 ロバート・H・ベンスン
「ジャーミン街奇譚」 A・J・アラン
「幽霊駅馬車」 アメリア・B・エドワーズ
「南西の部屋」 メアリ・E・ウイルキンズ=フリーマン



デ・ラ・メアの「失踪」からは読者を引き込む吸引力を感じた。
強い日差しに当てられたような一遍。
首筋からは冷やりとした汗がつたう……。

W・W・ジェイコブズの「徴税所」は楽しい。
怖い話に分類されるんだろうけれど、ジェイコブズ作品は遊園地のアトラクション的楽しさがある。
読むたびに不思議だなぁ、と思う。
『猿の手』も未読の方はどうぞお楽しみあれ。
(オススメはこちら『衝かれた鏡 エドワード・ゴーリーが愛する12の怪談』

「色絵の皿」は主人公の女性の性格が、なんだか自分に似ているような気がして笑ってしまった。
私だったら、最後にどういう行動をとっただろう。

「角店」も好きな一遍。
舞台設定に情緒があって効果的。

「ジャーミン街奇譚」はBBCのラジオ番組の人気コーナーを、そのまま書き起こしたものだとか。
パーソナリティのA・J・アランが毎回自ら創作していたのだというから驚きだ。
これは国も言葉も時間も越えて、リアルタムで耳で楽しみたかったなぁ。

話の最後をどう終わらせるか、というのが怪談の醍醐味だと思うのだが「誰が呼んだ?」「南西の部屋」のラストはセリフが作品を引き締めている。


上下巻を通して、どれも個性的で読み応えがあった。
平井呈一氏の幻想・怪奇小説への愛情が随所に感じられる。
堪能させていただきました!





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