ちった図書室 ~Bibliothèque de Cittagazze~

手当たり次第に読んだ本を手当たり次第に記していこうという、意気込みだけは凄い図書室。目指すは本のソムリエです。

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『ジャンヌ』

「ジャンヌ・ダルク」モノは多い。
小説、漫画、オペラ、演劇、映画などなど。
主題に「ジャンヌ・ダルク」をもってくるだけで、人を惹きつけるパワーがある。

約600年前、ジャンヌ・ラ・ピュセルと呼ばれた少女がいた。
使用人・小娘・生娘。
そんな“la Pucelle”という取るに足らないような名で呼ばれながら、ジャンヌ、いやジャネットという一人の村娘が戦争に身を投じ、残酷にも火刑になり生涯を終えた。


本書は「機動戦士ガンダム」の作画で有名な安彦良和氏の描く、ジャンヌ・ラ・ピュセルと、それを追体験することになる男装の少女の話だ。
フルカラーが嬉しい豪華版。

物語は男装の少女・エミール(エミリー)がヴォークールールで幻をみるところから始まる。
エミールがみたのは聖人でも天使でもなく「ジャンヌ・ダルク」だった。

ラ・ピュセルの仕事が「シャルル7世を国王にすること」だったなら、エミールの仕事は「国王を護ること」だ。
ドンレミイ村で、オルレアンで、エミールはジャンヌからハッキリと託宣を受ける。

「国王を護ること。それが平和になるということ」だと。
しかし、利己的なシャルル7世に不満と不安を募らせるエミール。

対峙するのは王太子ルイ11世。
従うは、かつてラ・ピュセルと共に戦場を駆けた錚々たる顔ぶれだ。
ジャンヌが「うるわしき公爵様」と慕ったアランソン公をはじめ、ポトン・ド・サントラーユ、ラ・イール将軍、シャルル・ド・ブルボン公、パタール・ドルレアン。
彼らが少女を火刑に追いやった国王を許せず、王太子派についたのも心情を考えれば当然だろう。

そして、一番変わってしまったのは、ジル・ド・レー。
「青ひげ」のモデルとして悪名高い人物だ。
本作でも悪魔に憑りつかれ、暴食と肉欲に溺れているのだが……。なぜか悪く思いきれない。
イエスに祈り、エミール……いや、エミリーにジャンヌを重ね、ピュアな面さえうかがえる。
それでも、それを不思議に思わせないストーリーテリング。


結構な厚みがある本だが、クライマックスの王太子ルイとエミールとの対決まで一気に読ませるパワーがある。
ジャンヌ・ダルクの話、というと当然ながら火刑のシーンで終わってしまい「英仏百年戦争」がどうやって終わったのかが分からないことが多い。
本作では戦争の終結、そしてジャンヌの復権までが描かれているのも興味深かった。


約600年前、戦場に身を投じた「ジャネット」という少女が実在した。
それは確かなのだ。
そして、彼女の出現から間もなく戦争は終わった。
それも、確かなのだ。

改めて「ジャンヌ・ダルク」という存在を不思議に思い、また納得もする自分がいる。






こちらも興味深い二人のジャンヌの物語。
特にジル・ドゥ・レが何故「青ひげ」になったのかが納得がいく。
ご興味がありましたら是非どうぞ。

藤本ひとみ 『聖女ジャンヌと娼婦ジャンヌ』




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