ちった図書室 ~Bibliothèque de Cittagazze~

手当たり次第に読んだ本を手当たり次第に記していこうという、意気込みだけは凄い図書室。目指すは本のソムリエです。

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『星を継ぐもの』

そのときが ふたりの 旅のはじまり
ひとりじゃないって すてきなことね

              「ひとりじゃないの」 天地真理



名作中の名作を記事にしようとする時、ネタバレせずに書くにはどうすればいいのか困る。悩む。
読んで下さる方がいらっしゃるのだから分かりやすく、面白く伝えたい。
読了済みの方にも面白く読んでいただきたいし、未読の方に興味をもっていただけたらとても嬉しい。
……うむ~~……。

頭を抱えた私のなかに響いてきたのは、天地真理さんの「ひとりじゃないの」であった。


ラストがギュッと本書を引き締める。
ぶわわっと鳥肌が立つほど感動する。

貴重な鉱石だって、見る人が見なければただの石ころだ。
でも石ころ一つでもそれは大切な「地球のかけら」。
これは、そんな「石ころ」の話……。

物語の幕開けは壮大だ。
月で発見された5万年前の死体。
赤い宇宙服を纏ったミイラは“チャーリー”と呼ばれ、地球が引っくり返るような一大センセーションを巻き起こす。
当然、主人公をはじめとする、あらゆる分野の学者やエンジニアが集められ、多角的な調査が行われる。

ある学者は断言する。
「“チャーリー”は間違いなく人類です」と。

5万年も前に月に行く事が出来るほど高度な文明を人類は手にしていたのか?
では人類史はどうなる?
一度滅んでいるということか?
いやいや、それなら地球に高度な文明の遺構が全く残っていないではないか。


ひとつの謎が解けては次の謎にぶつかり、それを解明するとまた次の謎が行く手を阻む。
その様子がスピーディーで面白く、なんと楽しいことか!
好奇心に駆られて、思わず自分も学者の一人になって議論に加わっているような気になった。


“チャーリー”が所持していた「手記」の解読が進み、主人公は「月」に強く惹かれるようになる。
「彼らのいう月とはなんだ?」
「“チャーリー”は、どうしてあの場所で死んだんだ?」

少しずつほどける謎の糸。

その大きな糸の絡まりをほどいたのは、主人公がある場所から見た木星の大斑点。
本を読みながら、思わず仰け反りたくなるような迫力ある描写だ。

そして……。


これは「再会」の物語だ。
チャーリーは、石ころとの再会を月で待っていたのかもしれない、と思う。
そして、人類の内に潜んだDNAは歓喜に包まれているだろう。

東京の空は狭い。
けれど、その狭い空からも月や星が明るく美しく見える時がある。
そんな時は思わず言いたくなる。

「乾杯」
「恒星の世界に」


「恒星の世界に!」



| 長門有希の100冊 | 17:00 | comments:2 | trackbacks:1 | TOP↑

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