ちった図書室 ~Bibliothèque de Cittagazze~

手当たり次第に読んだ本を手当たり次第に記していこうという、意気込みだけは凄い図書室。目指すは本のソムリエです。

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『桜の森の満開の下・白痴 他十二編』

美しくてくらくらする。
珠玉の14編である。

「風博士」
安吾版 『ドグラ・マグラ』 スチャラカチャカポコチャカポコチャカポコ。
偉大なり、風博士!
愛すべき風博士に万歳!

「傲慢な眼」
見つめ合うだけなのに、一生分の恋をしたような……。
それが傲慢であってもなくても。

「姦淫に寄す」
心を覗こうとすることは、たしかに姦淫かもしれない。
舞台が教会であることも面白い。

「不可解な失恋に就て」
確かに不可解なんだけれども、人の心ってそんなものなのかも。
自分で自分に説明できないことってあるものね。

「南風譜」
なんともいえない艶めかしさ。
美しさに嫉妬するのは、根源的な、本能的なものだろうと思う。

「白痴」
燃え盛る火が見える様で。
空襲に逃げる二人のシルエットが目に浮かぶ。
そこには不思議と悲惨さがない。生きる力がある。

「女体」
肉体でなく、精神のみ愛し合うことを望む主人公。
プラトニックな愛はすぐ傍にあると思うのだけれど、冒険しないと気が済まないのね。

「恋をしに行く」
なんて素敵なタイトル!
「女体」の続編。
冒険してみた主人公さん、だから言ったでしょう?
望み描いたような恋はそうそうできるものじゃないのよ。

「戦争と一人の女(無削除版)」
男性視点。
ああ、戦争ってどんどん心が乾いていってしまうんだ。
疲弊して、疲弊して、守るものがなければ全てどうでもよくなってしまうのか。

「続戦争と一人の女」
続編は女性視点で描かれる。
乾いている男性に対して、女性は妙にリアルだ。
もの凄く生活感がある。

「桜の森の満開の下」
美しさと恐ろしさは同居している。
一瞬なのかもしれないし、長いかもしれない桜の時間。
パッと散るから美しいの。
散らない桜に、きっと美しさは宿らない。

「青鬼の褌を洗う女」
生きること、生活すること。
どんなに望まなくても、じわじわと浸みこむ水の様に染まってゆくのだと思う。
それが、暮らすということなのだから。

「アンゴウ」
全てが回転して昇華するラスト。思わず泣いてしまった。
ドロドロとしたもののなかのに見つけた光。
タイトルがいい……!
本を愛する者の一人としても思い入れがある一編。
素晴らしい。

「夜長姫と耳男」
うわー、凄く綺麗……。
「桜の森の満開の下」を更に濃縮したような怖さと美しさ。
天井からぶら下がる蛇を、どうしてこんなに美しいと感じるのか。
ラストが作品を引き締める。


危ういデカダンスに魅了されずにはいられない。




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