ちった図書室 ~Bibliothèque de Cittagazze~

手当たり次第に読んだ本を手当たり次第に記していこうという、意気込みだけは凄い図書室。目指すは本のソムリエです。

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『楽園のカンヴァス』

大きい……!
2010年のオルセー美術館展で、ルソーの「蛇使いの女」を見た最初の感想はその大きさだった。
終生認められない画家人生を送った、アンリ・ルソー。
豊かとは言い難かったであろうその生活に、似つかわない程の大きさのカンヴァス。
少し、狂気に似たものを感じてクラリとした。


そして、本書で取り上げられる「夢」。
MoMA(ニューヨーク近代美術館)に「眠るジプシー女」と共に収蔵されている。
残念ながら、まだ見たことがない。

Rousseau-Dream

アンリ・ルソー 「夢」 1910年

甘き夢の中 ヤドヴィカは
やすらかに眠りに落ちてゆく
聴こえてくるのは 思慮深き蛇使いの笛の音
花や緑が生い茂るまにまに 月の光はさんざめき
あでやかな調べに聴き入っている 赤き蛇たちも



画家は自ら絵に詩を添えている。
最晩年の大作に、それだけ思い入れが強かったのだろう。

しかし、そっくりな絵がもう一点存在したら……?

登場人物が挑むのは、この「夢」とそっくりな絵「夢をみた」の真贋を“物語を読むこと”で見極める、という風変わりな対決だ。
一日一章ずつ読み進み、七日目の講評で勝利した者にはその絵の取扱い権利(ハンドリングライト)が与えられる。

真筆と認められれば莫大な金額と名誉がついてくる。
そして、勝負する二人にはそれぞれ負けられない事情があったのだ……。


フリーのキュレーターでもある原田マハ氏の真骨頂ともいえる本書。
ルソーや美術への愛情が溢れていて、読んでいて楽しかった。
いつも何気なく訪れる美術展の裏事情も垣間見ること出来て興味深い。
余韻の残る読後感も心地よく、何よりもアートに対する情熱が感じられたのが一番良かった。

私は絵を見るのが好きだ。
そこに理由はない。
きっとルソーも、ただただ絵を描くことが好きだったのだろう。
それが、あの大きなカンヴァス。

2010年のオルセー美術館展、最大の目玉であり図録の表紙を飾ったのは、セザンヌでもモネでもゴーギャンでもなく、ルソーだった。
絵の為だけに旅行する余裕はないけれど、いつか絶対にMoMAを訪れようと思う。





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