ちった図書室 ~Bibliothèque de Cittagazze~

手当たり次第に読んだ本を手当たり次第に記していこうという、意気込みだけは凄い図書室。目指すは本のソムリエです。

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『チェーホフを楽しむために』

演劇は好きだが、チェーホフはまだ観たことがない。
だが、演劇雑誌なんかを見てるとしょっちゅう上演している印象がある。
それもそのはず、ロシア以外の上演では日本が最多らいしいのだ。

「三姉妹」、「桜の園」、「ワーニャ伯父さん」、「かもめ」、どれもよく公演案内を目にするが食指が動かなかった。
イメージとしては、暗い時代背景のなか終幕で登場人物が希望を見出す……みたいな感じ。
どうやらそんなに間違ってもいないらしい。
ただ、なにやら「演劇通好み」という印象がプラスされた。

戯曲家として名を馳せているチェーホフだが、実のところ本業はお医者さん。
そして、沢山の短編小説を書いているらしい。
しかも出発点はお小遣い稼ぎ。
長編が重んじられる当時の風潮に、先輩から発破をかけられて悩んだりして。

短編と長編の難しさなど、作家ならではの切り込み方が本書の読みどころだ。
特に短編は著者である阿刀田氏の得意とするところ。
氏は演劇通でもある。
その阿刀田氏をもってして「むつかしい」と言わしめるチェーホフの戯曲。
原因は韜晦趣味なところにあるようだが、これが「通好み」という印象に繋がった。

短編や、残された多くの書簡からは、チェーホフのプレイボーイ的恋愛観などが読み取れるらしい。
それをユーリー・ブイチコフが戯曲化した「チェーホフ的気分」の方がなんだか面白そう。
著者はブイチコフ氏の元も訪ねている。

現在、博物館となっているチェーホフの家はヤルタにある。
ウクライナのクリミア半島だ。
当時、流刑地だったサハリン島に興味を持ち、熱心なルポルタージュを残したチェーホフ。
彼は現在のクリミア半島問題をどう思っただろうか。

私の感想が、戯曲よりもそこに着地してしまったのが、なんとも寂しい。




| 阿刀田高 | 21:00 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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