ちった図書室 ~Bibliothèque de Cittagazze~

手当たり次第に読んだ本を手当たり次第に記していこうという、意気込みだけは凄い図書室。目指すは本のソムリエです。

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『銀のキス』

抱きしめたくなるような愛おしさでいっぱいになった。
初めて読んだのは、主人公のゾーイと同じ高校生の時。
でも、「本当に読めた」と実感できたのは大人になった今のように思う。

年末に観た映画 「ぼくのエリ 200歳の少女」 がなんとなくまだ自分の中に漂っていて、ヴァンパイアものが読みたくなったのだ。

ヴァンパイアが眠ることのできる「故郷の土」のようにひっそりと大切に、この物語は私の本棚に眠っていた。

当時はゾーイと同じく様々なことが不安定で不確かで。
ゾーイと同じようにガリガリに痩せていて。
私はすっかり主人公と心をシンクロさせていた。
つまり、自分のことでいっぱいいっぱいで、周りが見えていなかったのだ。

それはそれで良かったのだと思う。
そういう時期もあるものだし、それは意味があることなのだ。

ただ、今はもっと苦しみや痛みがあるのだと分かる。
私だけではなく、皆そうやって何かを抱えて生きているのだということも知っている。

兄に吸血鬼としての宿命を背負わされたサイモンは、オリバー・クロムウェルが辣腕を振るっていた17世紀のイングランドに生まれた。
ゾーイの暮す20世紀のアメリカに渡ったのも復讐心からだ。

しかし、長すぎる時間には復讐ではない「もう一つの意味」があったのではないだろうか。

それこそが、ゾーイに出会うこと。
自身を慈しむこと。
心を分かち合うこと。

ゾーイにとっても全く同じことがいえると思う。
それが二人が交わした「キス」のカタチ。
心が浄化する優しい勇気のくちづけ。

それがなければ、あの抱きしめたくなるようなラストシーンには繋がらないだろう。

人は変わる。
それでも大切な人を心に留め置くことはできる。

ゾーイの新しい明日はきっと力強いものになるに違いない。
もう孤独ではないのだから。




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