ちった図書室 ~Bibliothèque de Cittagazze~

手当たり次第に読んだ本を手当たり次第に記していこうという、意気込みだけは凄い図書室。目指すは本のソムリエです。

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『マリー・アントワネットの生涯』

ソフィア・コッポラ監督の映画「マリー・アントワネット」は、なかなか斬新だった。
内容らしい内容がないのである。
キルスティン・ダンスト演じるアントワネットが、ヴェルサイユでただひたすら遊び続けるだけ。
色とりどりのマカロン、ハイヒール、ドレス、賭け事に色事……。
それだけ。

Antoinette


でも、たぶん本当にそれだけだったのだと思う。

藤本ひとみ氏はこう考察する。
遺伝による不幸だと。

母は女帝マリア・テレジア。
出産しながらも書類に目を通していたという女傑にして数か国語を操る才女。外交に長け戦争にも強い。
父はロートリンゲン公国の公子フランツ・シュテファン。
マイペースな貯金上手。

上記に挙げた両親の長所を、全く引き継がなかったのである。
ただ、母の頑固なまでのエネルギッシュさ。
そして、フランス語以外ほとんど話せず、細かいことは気にしない、という父の軽薄さのみを受け継いでしまったのだ。

これが普通の家庭なら「ちょっと困ったかわいい奥さん」で済んだかもしれない。
それが一国の王妃になってしまった。
しかも、夫であるフランス国王は弱気で王妃の言いなりである。

……フランスの人、大変だったろうなぁ……。

目も当てられない惨状に思わず天を仰いで呆然としてしまう。
革命起こしたくもなるわな、それは。

しかし、王様は大事だ。王様は太陽なのだ。
フランス国民は王を愛し、頑張っていた。

だが、国王一家は国外逃亡を計る。「ヴァレンヌ逃亡事件」だ。
……国民を捨てた王はもう王ではない。

あれよあれよのうちに共和制が誕生。
ルイ16世は「王であること」が罪として処刑になる。

ところがどっこい、アントワネットはまだしぶとく生き残ろうとする。
何度も持ち上がる逃亡計画に積極的に加担し、フランスをオーストリアに売り、断頭台に消えた夫に罪をなすりつける。
『ベルサイユのばら』終盤の潔いアントワネットは幻想なのだ。

最後の最期まで、間違った方向に突っ走り続けた。
ここまでくると死に値する罪は十分すぎるほどだったと言わざるを得ない。


さて、藤本氏の遺伝による不幸諸々説も真に尤もだが、私自身が身をもって感じたことが一つある。

以前、旅行で訪れたスウェーデンのストックホルム宮殿でのことだ。
厚い石の壁でかこまれた、むせ返る程飾り立てられた内装や調度品の数々。
普通の人間が長期間滞在したら頭のネジが弛んではじけると思った。
それほど、王家と民草とは遮断されているのだ。
奇しくもスウェーデンといえばアントワネットの恋人フェルセンの国……。

王宮のような隔絶された場所で「普通の女」であるアントワネットが育ち、また更にゴージャスな場所に嫁いでしまった。
革命時代の王妃になれというのがもう無理な話であろう。

流れた血の多さを考えれば「不幸」で済む話ではないが、巡りあわせの悪さを思わずにはいられない。
やはり、呆然と天を仰いでしまうばかりだ。





ファッションを楽しむなら良し!歴史ものとして観るなかれ。



| 藤本ひとみ | 20:51 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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