ちった図書室 ~Bibliothèque de Cittagazze~

手当たり次第に読んだ本を手当たり次第に記していこうという、意気込みだけは凄い図書室。目指すは本のソムリエです。

2012年04月 | ARCHIVE-SELECT | 2012年06月

| PAGE-SELECT |

≫ EDIT

ダーガーの頭ン中 「ヘンリー・ダーガー展」

ヘンリー・ダーガーという人物をご存知だろうか。
そして、彼の住んでいたもう一つの世界を。

風薫る5月。
ちょうど昨年の今頃、そのもう一つの世界「非現実の王国」の一部が原宿に現れた。
一見かわいらしく思えるが、ご存じなかった方は画像検索をかけていただくと手っ取り早い。
そこはお花畑を銃を持って駆け回る少女達の居る世界。
戦争をしている彼女らは、時折敵に捕まり血みどろの拷問を受ける。
が、決して死ぬことはない。
何度でも甦り、戦い続けるのだ。

その名も「ヴィヴィアン・ガールズ」
ソックリの顔とペニスをもつ両性具有(アンドロギュヌス)の7姉妹である。
なぜ、少女にペニスがあるかは分からない。
諸説あるが、本人が亡くなっているのだからどうしようもない。
とにかくダーガーは彼女らの味方である。
残虐な拷問を与えながらも、物語の世界では徹底して味方だ。
サディスティックな快楽にふけっていたのかもしれない。
あるいは、泣きながら描いていたのかもしれない。
今となっては確かめようもないが。


darger


ダーガーの部屋を再現したコーナーや遺品の展示もあり、なかなかの見応えだった。
迷路のような展示通路をぐるぐる歩き回っていると、まるで自分も「非現実の王国」に迷い込んだような気さえしてクラクラした。
原宿という場所柄、わざとハズシたファッションの人々が黙々と絵に見入っている様もそれに拍車をかけていたのかもしれない。


帰り道、静かな喫茶店に入りコーヒーをすすりながら思った。
今ヘンリー・ダーガーが生きていたら、この作品群は残らなかったのではないか、と。
きっと戦う美少女達の溢れるジャパニメーションに夢中になっていたのではないか、と。

だからどうということはない。
しかし、ダーガーの残した作品から溢れる「愛情」に胸が苦しくなったのも事実だ。
この気持ちがなんなのか、分かりそうで分からない。

彼は最後、自分の作り上げた「王国」を全部残して施設に入り、亡くなった。
どんな気持ちで「王国」を出たのか。
ちびた鉛筆や、雑誌を括る為にとってあったと思われる紐。
「王国」に関する全ての物に「愛情」を感じずにはいられなかった。

そんな部屋を出るとき、ダーガーは死んだのかもしれない。
知る由もないが。




| 美術展 | 20:13 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

| PAGE-SELECT |