ちった図書室 ~Bibliothèque de Cittagazze~

手当たり次第に読んだ本を手当たり次第に記していこうという、意気込みだけは凄い図書室。目指すは本のソムリエです。

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『ウィスパーズ』

「そうだ。ささやき、ささやき、ささやき。まわりじゅうで」

ナイフとワインが、想像の力で不気味にちらつく。

アメリカ西海岸、ナパバレーでワインパーティー。
ナイフで切った美味しいチーズと共に味わいながら、お喋りを楽しむ。
ささやきの様な風がそよぐ。

そんなのどかな光景が、クーンツにかかると一転恐怖に包まれる。

ワインは殺意のきっかけに。
ナイフは凶器に。
お喋りは狂った会話でしかなくなる。
そして、ささやきは……。

ヒロインの抱えるトラウマや、生活感溢れる登場人物が一気にストーリーを駆けていく。
チョイ役にまで厚みをもたせた描写に「この人物はどう関わってくるのだろう?」と興味を煽られる。

犯人はクレイジーだ。
だが、その生まれや成長過程を想像すると、あまりの激しさと悲しさに私の思考がストップをかける。
死んだ自分と会話をする男。
自分を失うという苦痛にまでさいなまれた男。
そして、ささやき。
それが犯人だ。

あっという間に読み終えたけれど、怖ろしさはしばらくまとわり付いて離れなかった。
あの、ささやき の様に。


 

| ディーン・R・クーンツ | 22:12 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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