ちった図書室 ~Bibliothèque de Cittagazze~

手当たり次第に読んだ本を手当たり次第に記していこうという、意気込みだけは凄い図書室。目指すは本のソムリエです。

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『覗き小平次』

目の前には古い箪笥。
一章ごとに、名前の書かれた小引き出しを開けていく。
それを、そおっと「覗きながら」読んでいく。
そんな感覚。

出てくるのは「芝居」。
さながら歌舞伎を観ている様だ。

中心に居る男。
小平次。
演じられない役者の小平次。
しかし、なんと立派な役者ぶりだろう。

それもとてもつらい役だ。
周りが泥まみれで大立ち回りを演じるなかで、小平次だけがただそこに「居る」。
「ただ居る」という事が、どれだけつらいか苦しいか。

でも、皆が泥にまみれるのは「居ない自分」と格闘しているからだ。

「それは――昔を捨てて今を選んだだけのこと」

つらくて苦しくて闘って。
己を見つけるということは、痛みを伴う事なのだ。
たぶん。

ああ…、土の臭いがする…。



| 京極夏彦 | 23:42 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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