ちった図書室 ~Bibliothèque de Cittagazze~

手当たり次第に読んだ本を手当たり次第に記していこうという、意気込みだけは凄い図書室。目指すは本のソムリエです。

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『内なる宇宙』

おお友よ、このような旋律ではない!
もっと心地よいものを歌おうではないか
もっと喜びに満ち溢れるものを
           
         「交響曲第9番 歓喜の歌」 ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン



遂にここまで……。
色々な意味で、そう思う。
ここまで掘り下げるとは、『星を継ぐもの』 を読んだときは想像だにしなかった。

前作 『巨人たちの星』 で、心ならずも生活の基盤を取り上げられた人々がいた。
生活する術を学ぶ機会がなく、その意味合いすら分からない人々の混乱ぶりは想像に余りある。
そこに残された「大変な置き土産」。
路頭に迷う人々が「それ」にすがってしまうのは仕方がないかもしれない。

そんな世界の再生を任されたのが、ガルースをはじめとするガニメアン達。
テューリアンにもなりきれず、宙ぶらりんの存在に居心地の悪さを感じていた彼ら。
それに遣り甲斐を見い出すには十分な理由と責任もあった。

物語は「ファンタズマゴリア」という世界に暮す青年から始まる。
このシリーズとしては異例の幕開けに、まず面食らう。
どうやら彼は「ハイペリア」と呼ばれる世界に行くことを夢見ているようだ。
それには修行が必要らしいことも、だんだん分かってくる。

新しい惑星で奮闘するガルース。
異世界で修行する青年。
そこに、地球人であるハント一行が加わって、やっと事態が輪郭を見せる。

月で発見されたミイラ“チャーリー”の謎を説き(『星を継ぐもの』)、時空の彼方から現れたガニメアンとの友情を築き(『ガニメデの優しい巨人』)、新たな世界と地球を結びつけた(『巨人たちの星』)ヴィクター・ハント。

「ファンタズマゴリア」という更なる世界を、彼は「エントヴァース」と名付ける。
外宇宙である「エクソヴァース」に対する呼称だ。
イギリス人のハントらしく 『指輪物語』 の「エント」から想を得てのものだというから意味深くも面白い。

「エントヴァース」と「エクソヴァース」。
それを繋ぐ「アヤトラ」と呼ばれる存在。
新興宗教のような危うさを描きつつ、新たな観点へと昇華させるホーガンの筆力には驚かされるばかりだ。

地球人、ガニメアン、テューリアン、そして、エント人。
広がる宇宙。
広がる生命。

時に、宇宙と人間の細胞が比較されることがある。
シリーズを通して描かれる人間賛歌は、宇宙賛歌でもあるのだと思う。
読了後、私の頭のなかでは「歓喜の歌」が鳴り響いていた。

どこまでも、どこまでも広がる宇宙。
エントヴァース(内側)とエクソヴァース(外側)を行き来することは、私達だって可能だ。
「本」という名の宇宙。
それがきっと、もうひとつの“内なる宇宙”なのではないだろうか。





| ジェイムズ・P・ホーガン | 05:10 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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『巨人たちの星』

最後に崇めた 一つの真理が 牙をむく時をうかがう

                 「GREAT DEVOTION」 聖飢魔II



2080年代、地球はようやく内戦を止め、平和と共存に向かって歩き出した。
そこに、異星人ガニメアンとの穏やかな出会いが影響している事は間違いない。
地球という惑星が、そこに住む一人一人が「ひとつになれる」という大きな自信になった事だろうと思う。

そんな地球を見ている「観察者」が居た。
かつてミネルヴァで相対していた戦争は、まだ続いていたのだ。
長期的に。
一方的に。


今回はサスペンス色が濃く、楽しいドキドキよりも、緊張感の方が強い。

ガルース率いるシャピアロン号の一行は、かつてのガニメアンが暮す星「ジャイスター」に辿り着いた。
しかし、待っていたのはガニメアンから更に進化したテューリアン。
ガルース一行は、時間に取り残された「旧ガニメアン」として、また違った孤独を味わうことになる。

カラザーをリーダーとするテューリアンは、恒星間を自在に移動する技術をもつ。
「太陽を動かす」という地球人には冗談としか思えない実験を行っていたガニメアンでさえ、驚嘆するようなテクノロジーを獲得していたのだ。
あらゆる「場」は最大限に生かされ、後に訪れたハントをはじめとする地球人一行は「まるでエッシャーの世界に迷い込んだよう」な感覚を味わう。

しかし、テューリアンの地球人に対する見解は非常に厳しいものだった。
いかに地球人が攻撃的であるか。
いかにシャピアロン号を責めさいなんだか。

悪夢のようなテストの後、誤解を解けたはよいものの、何故その「恐ろしい誤解」が生まれたか。
「悪意」の出所はどこなのか。
「観察者」は、そして「攻撃」はどこから行われているのか。

温厚な性質をもつテューリアンや、まして地球人と強い絆で結ばれたガニメアンではありえない。

ここからが本作の見せ場だ。
痛快といっていい程の鮮やかな「戦争のお手並み」を地球人は披露することになる。
あくまで「平和的に」だ。

そして、シリーズ最終作である 『内なる宇宙』 への布石ともいえるセリフが引き出される。


「しかし、ジェヴェックスは……」
「ジェヴェックスは頼りにならん。われわれはいったい何を信じたらよいのだ?」



攻撃者が「崇めて」いたもの。
与えられるだけで、己で掴まなかった「真理」。
それが、「牙をむいた」時のセリフが上記に凝縮されているように思う。


『星を継ぐもの』 での謎をまた一つ解明しつつ、作者の追撃は続く。
読者の心を揺さぶり、平和への恒久的な模索を続ける意味を強く訴える本作。

そして、人類の旅は人間賛歌を歌いつつ更なる深淵へ……、最終作へと続く。






| ジェイムズ・P・ホーガン | 18:12 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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『ガニメデの優しい巨人』

あなたに逢えた それだけでよかった
世界に光が満ちた
                   「アゲハ蝶」 ポルノグラフィティ



読むかどうか、とても迷った。
前作 『星を継ぐもの』 があまりにも美しい終わり方だったから。

結果、読んで良かった!
前作を裏切らない面白さ。
また違ったドキドキ感。
今思うと、この「優しい巨人」たちに会わないなんて、なんともったいない事か!

ガルース、シローヒン、そして、ゾラック!
思わず愛おしさを抱きしめる。

ガルースには尊敬の念を抱くばかり。
シローヒンとは同じ女性という視点から、考え方などを話してみたい。
ゾラックとはエスプリの効いた会話を楽しみたい。

本作は、前作にも増した 地球人賛歌 だ。
それを教えてくれたのが、ガニメデの優しい、優しい巨人たち。

遠すぎる旅の果てに出会ったシャピアロン号とのコンタクトには、ドキドキとワクワクでいっぱい。
冒険心を掻き立てられる。

ガニメアンとの対話、進化の歴史等の意見交換には興味津々。
かつてガニメアンが暮した、天国のような惑星「ミネルヴァ」で、いかにして「温厚な性質」「知性」「思慮深さ」を獲得したのか。
作者の思い切ったアイデアには驚くばかりだ。

地球人は「競争本能」と「攻撃性」によって進化してきた。
どうやら「攻撃性」の方は歴史を鑑みるに、克服の途中にある。

今も「競争本能」は旺盛だ。
悪いことではないだろう。
競争本能は発展や結束力を促す。

しかし、少しでも間違えば「攻撃性」が「かつてない程の凶暴さ」を伴って目を覚ます。
人類はタイトロープの上に立ち続けていることを忘れてはならない。

もし、異星人とのファーストコンタクトが叶うとしたら、その時は「世界に光が満ちて」いるように。
そして、「逢えてよかった」と思ってもらえるように。
未来をつくる力は、もう十分学んできたはずだ。

読み終えて、『ドラえもん のび太と鉄人兵団』を思い出した。
博士が植えつけ、しずかちゃんとリルルによって書き換えられた「競争本能」。
アムとイムの子孫は「優しいメカトピアン」に進化したのかなぁ。

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| ジェイムズ・P・ホーガン | 00:15 | comments:2 | trackbacks:0 | TOP↑

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