ちった図書室 ~Bibliothèque de Cittagazze~

手当たり次第に読んだ本を手当たり次第に記していこうという、意気込みだけは凄い図書室。目指すは本のソムリエです。

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『たのしいムーミン一家』

おお、三作目にして遂に「たのしい」がきた!

きっと、ムーミンママが、あの紅白幕のような、それでいて可愛いエプロンをつけてパンケーキを焼いたり。
ムーミンパパが優雅にパイプをふかしていたり。
ムーミンがスニフやスノークのお嬢さんと楽しくベリー摘みに行ったり。
そんな日々が……。
日々が……、目次を見て打ち砕かれた。
大丈夫なのか、これは。「たのしい」のか。

目次から抜粋すると

moomjn

思わず怖いフォントで書いてしまった程の迫力だ。


ムーミントロールは、11月になると冬眠をする。
そして、暖かな風が吹くようになった3月頃にのんびりと目覚める。

目覚めたムーミンは、さっそくスナフキンに「山の上に石を積みに行こう」と誘われる。
彼は本当に山と石が好きである。
スナフキンを山から出禁にしないと危ないと私は思う。
(参照 『ムーミン谷の彗星』


そこで見つけるのが物語の中心になる「真っ黒いシルクハット」だ。
しかし、ムーミンパパが気に入らなかった為に「紙くずかご」にされてしまう。
ゴミとみなした物をゴミ箱にするとはまた斬新なアイデアである。
環境に優しいので参考にしたいところだが私にはハードルが高そうだ。

この紙くずかご、もとい帽子は「入れた物を別の物に変えてしまう魔法の帽子」。
紙くずはふわふわ浮かぶ雲になり、ムーミンとスノークのお嬢さんのお気に入りに。
しかし、かくれんぼで帽子の下に隠れたムーミンの姿を変えられてしまう一大事も。
誰も分かってくれないピンチのなか、ママだけは迷わず自分の息子を言い当てる。


「ね、なにがおこったって、わたしにはおまえが見わけられたでしょ」


第一作目から描かれるママの家族愛は、これ以外でもいかんなく発揮される。

色々な物を良くも悪くも変えながら、楽しく過ごすムーミン谷の住人たち。
持ち主はラストで登場するが沢山の願いごとを次々と叶えてくれる。
さすがは帽子の持ち主だ。

そして誰よりも何よりも素敵なのはムーミンの願いごと!

喜びと相手を思いやる心が凝縮されて、物語をハッピーエンドへと導く。


まためぐる季節。
ムーミンは眠っている間の時間を「少し損している」と思ったりするようだけれど、目覚めた時の喜びも十分感じている。
さわやかな風の気持ち良さ。
晴れた空の眩しさと温もり。
何気ない挨拶。

当たり前に過ぎていく時間を感動いっぱいに思えるのは「冬眠」という時間があるからだ。

私も病気で入院したり外に出られなかった時、自由に歩けるということだけで胸がいっぱいになった。

「冬眠」は次へのステップ。決して無駄ではない時間であり経験なのだと思う。






【蛇足】急にPCの調子が悪くなり、ただでさえ低い更新頻度が更に減ってしまった。
もしかして、誰か私のPC、あの帽子に入れた……?

| トーベ・ヤンソン | 01:24 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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『ムーミン谷の彗星』

彗星とはまた剣呑じゃのう……。
ムーミン一家の「たのしい」部分はまだか。

それにしても、このムーミン谷。
この高低差、海、どこかで見たことがあるわ……。
ああっ!これは鎌倉!?
天然の要害に屋敷を構え開墾するとは、ムーミンパパ恐るべし……。
ムーミンママの逞しさも頷けるわね。

そんな両親をもつムーミンは泳ぎが得意。
海に潜ってはじゃんじゃん真珠を拾ってくる。
パチンコ玉じゃあるまいし、真珠がじゃんじゃん沈んでいるとはいかなるものか。
なんだか凄い。
ムーミン谷、色々凄い。


彗星の話はパパのムーミン谷開発計画にまきこまれた「じゃこうねずみ」から聞かされる。
「地球がほろびる」という言葉に震え上がるムーミンとスニフ。

肝の座った両親は「知らないから怖いのだ」と二人を天文台に行かせることに。
その途中で登場するのが、あのスナフキンである。
旅慣れたバックパッカーの彼は二人の心強い味方だ。
しかし、面白い遊びと称して崖から大きな石を落して喜ぶトンデモ野郎でもあった。

「山くずれに」なったね。
スナフキンは、上きげんでした。


案の定崖崩れで死にかけたヘルムに怒られ、色々あって天文台にも着き、スノークのお嬢さんにカッコイイ所を見せ、帰途につく一行。


シリーズ2作目も、前作同様戦争の面影が色濃い。
彗星の影響で海や川が干上がる場面などは、異様な怖さを感じさせる。
「家族に会う」「家族と一緒にいる」ことへの難しさや愛情の深さは前作以上かもしれない。
逃げ惑う人々やムーミン一家が避難する場面なども、戦火の状況を強く思わせる。

作者の思い入れがとりわけ強く、何度も書き直された経緯をもつ本作。
練りすぎてまとまりに欠ける感があり、少し読みづらい。

しかしその分、戦時中にあった生活を想像する。
青空の見える美しい洞窟や野外ダンス場、美味しいジュースと気の好いおばさん。
そこから垣間見える、ささやかな楽しみ。

トーベ・ヤンソンのこの作品への愛着の深さが分かる気がする。




| トーベ・ヤンソン | 18:14 | comments:2 | trackbacks:0 | TOP↑

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『小さなトロールと大きな洪水』

ムーミン・シリーズの第一作。

まず、登場人物紹介で不安にさせられる。
こんなことは初めてだ。

・ムーミントロールのママ
  どこかへいってしまったパパを心配している


パパよ……、何処へ……。
このことから、本のタイトルと相まってムーミン達がのっぴきならない状態にあることが分かる。
ムーミンパパについてママが言うには

「パパはいつでもどこかへいきたいと思っていたの。ストーブからストーブへと転々とね。どうしても満足できなくて、ある日、いなくなってしまったの。あの小さな放浪者、ニョロニョロたちといっしょに旅にでてしまったのよ」

そして、パパはニョロニョロに騙されたのだと言い切るムーミンママ。
いや……、十中八九ニョロニョロは悪くないだろう。
なかなか激しい両親である。
大変だなぁ、ムーミン。

特に魅力的な登場人物は、青い髪のチューリッパと、海のプディングをご馳走してくれる真っ赤な髪の少年。
この二人はうっとりするほど素敵だ。

面白いのは岩山の奥の年とった男の人が住む世界だ。
レモネードやミルクの川、菓子パンの小石、雪はアイスクリーム、木にはチョコレートやキャンディがなっている。
ヘンゼルとグレーテルも羨ましがるようなこの場所だが、なんと入る時はエスカレーターなのだ。
ムーミン達はちっとも驚かない。
森の中のファンタジーにメカニカルな物は存在しない、と思い込んでいた自分に気づいて私の方が驚いた。

ムーミンやスニフはこの場所に大喜びだけれど、ママはとにかくパパのところに行きたくて仕方ない。
荒れた海を渡り、降り続ける雨のなかを果敢に進み、洪水に流されてムーミンママはパパとの再会を果たす。
この時のパパの挿絵が、情けなくてなんかカワイイ。

この本の主役はムーミンママだ。
洪水はパパ探しのほんの一部であり、本書のタイトルは『ムーミンママ、どこかへ行ってしまったパパを探す』とかの方が合っているかもしれない。
ママはパパが大好きで、ムーミンに対しては「私について来なさい」状態だからである。

しかし、訳者のあとがきを読むと物語の存在理由が理解できる。
出版時期が第二次大戦直後だからだ。

家族一緒に居ることがどんなに大切で大変なことだったか。
特にどれだけの女性が夫を心配し、共に暮らせる毎日を望んだか。
これなくしてムーミン一家の生活は始まらない。

トーベ・ヤンソンにとって「洪水」とは、辛い時代の奔流を表していたのだろう。
だからやっぱり、『小さなトロールと大きな洪水』がこの本のタイトルにふさわしいのだ。




| トーベ・ヤンソン | 02:12 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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