ちった図書室 ~Bibliothèque de Cittagazze~

手当たり次第に読んだ本を手当たり次第に記していこうという、意気込みだけは凄い図書室。目指すは本のソムリエです。

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『炎上 吉原裏同心(八)』

一言で申し上げよう。
本作は「サルゲッチュ」する話しだと……!!

面白いのだけれど、読みたいのはこういう面白さじゃないのよ。
コレジャナイの。
「サルゲッチュ」じゃないの!

前作 『枕絵』 に続いて作風が違ってしまって戸惑うばかり……。
求めているのは、こういう非現実的な面白さじゃないんだけどな。

百歩譲って「殺人」を教え込まれた「人殺し猿」までは良しとしよう。
しかし、しかし、猿が活躍しすぎ。
雁首揃えて、猿任せですかい?


実際に起こった「天明七年の吉原大火」を絡めているのだし、「田沼派v.s.松平定信」という政治的な転換期でもあるのだし、せっかくの題材が勿体ないなぁ、と思わざるを得ない。

“粋、見得、張り” が売り物だった、ワンダーランド的存在の「吉原」。
それ故、客からは“敷居が高い”と客足が深川などの「岡場所」に流れていく現実。
今後のテーマは「吉原遊郭そのものの在り方について」、ということになるようだ。

この重要問題を「猿」に奪われてしまった気がする。
どうにも“物語の敷居”まで下がってしまっている方が問題だ。







| 吉原裏同心シリーズ | 22:31 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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『枕絵 吉原裏同心(七)』

表題作の「枕絵」とは春画のこと。
今回の「枕絵」は吉原の人間でも「ドギツイ」という印象を受ける「危な絵(あぶなえ)」だった。
手籠めにした上にリベンジポルノを怖れた女性たちを食い物にしていた、という“ゲスの極み”な一件。
美しい玉菊燈籠との美と醜の対比、というところか。


さて、本書の主題はこちらではない。
田沼意次凋落に伴う「田沼派」と、松平定信の対立だ。

狙われたのは定信の側室、お香様。
吉原が先手を打って定信に「贈った」かつての禿である。
といっても、定信とお香は幼馴染の間柄。
その仲は睦まじく、今は定信の子をその身に宿している。

今回の裏同心夫婦のミッションは「田沼派に狙われるお香様を、国許の白川藩から江戸屋敷へお連れする事」だ。
勿論大変危険な道中であり、定信に恩を売るチャンスでもあるわけだが……。
敵も劇画風味が強すぎて、なんだが「子連れ狼」みたい。

一番気になったのが、お腹に子を宿す女性の前で血刀を振るう場面。
見せなくても済む場面が何回もあるんだけどなぁ。
これじゃ、汀女さんが一緒に行った意味がないじゃない。
ここに気を遣っていただけると、もっとメリハリが効いたと思うんだけどなぁ。

各所にコレジャナイ感がどうしても漂ってしまい残念だ。






| 吉原裏同心シリーズ | 19:00 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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『遣手 吉原裏同心(六)』

吉原では、格子の高さで店の「格」が一目で分かる。
天井まで達しているのが「総籬(そうまがき)」で最も格が高く、遊女の最高ランクである大夫を抱えている。
その次が格子の高さが半分ほどの半籬(はんまがき)、またその下が小見世(こみせ)と続く。


隆盛を極める総籬「新角楼」では、二人の大夫、華栴(かせん)と白妙(しろたえ)が華を競わせていた。
いずれ菖蒲か杜若。
折しも季節は初夏の頃。

その影で、遣手のおしまが首を括った状態で発見された。
残された判じ物の花の意味するところは何か……。


やがて事件は片が付き、物語はなんと吉原の外へと広がる。
新角楼の主の助左衛門と、会所の頭取である四郎兵衛が、おしまの生まれ在所に遺髪を届けに行くという。
勿論、同道するのは裏同心の幹次郎だ。


妓楼で遊女を束ねるのは店の主だが、「遣手」と呼ばれる女性の奉公人の腕によるところが大きい。
遣手とは、年季が明けた元遊女の女性だ。
遊女から奉公人へ。
それも総籬の遣手ともなれば、出世も出世、大出世である。

当時でいえば三十は過ぎている年増なので「遣手婆」とも呼ばれた。
その仕事は多岐にわたる。
客の懐具合を読むのは勿論、酒の手配、遊女と客との間柄の把握、遊女見習いである「禿(かむろ)」の躾などなど。
主と遊女の間に立って、その妓楼の全てを差配する。
憎まれ役を買って出ることも仕事のひとつだ。


重要な奉公人だったとはいえ、弔いの為に総籬の楼主と四郎兵衛会所の頭が連れ立って吉原を留守にする、というのはちょっと現実的ではないと思うのだけれど……。
それはまぁ、それとして。
全五章をとおして随所に「情」を感じさせる連作になっている。
痛快さと、淋しさ。


寺に詣でて晴れやかな気分に浸る妓楼主に、四郎兵衛は釘をさすことも忘れない。

「(略)仏心は大事ですが、泥水に浸かり、闇に潜む覚悟を忘れてはなりませんぞ」

廓の主は「仁・義・礼・智・忠・信・孝・悌」という人が持つべき規範を忘れたもの、「亡八者」とも呼ばれる。
対比としてか『南総里見八犬伝』の登場人物を思わせる名前もちらほら。


吉原の様々な面を、大門の外から、更には江戸の外から離れて見ることが出来てまた違った面白さがあった。





| 吉原裏同心シリーズ | 06:59 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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