ちった図書室 ~Bibliothèque de Cittagazze~

手当たり次第に読んだ本を手当たり次第に記していこうという、意気込みだけは凄い図書室。目指すは本のソムリエです。

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『夜来たる』

アシモフの自薦短編集。
一遍一遍に著者自身の解説付き、というファンにはたまらない一冊。

特に「夜来たる」は、若干21歳のアシモフの名を一躍SF界にしらしめた作品として有名だ。
期待しすぎていたせいか、初めて読んだときは「それほどかなぁ」という感想しか持てなかった。
だが、読み込んでいくと「これは名作!!」と大いに納得。
他の作品も綺羅星のように並ぶ名作揃いだ。


「夜来たる」
6個の太陽に照らされる、惑星ラガッシュ。
しかし、今、全ての太陽が沈み「夜」が訪れようといている。
千年に一度の夜が!
その状況下、天文台では科学者、心理学者、考古学者、ジャーナリスト、加えてカルト教団の教徒までもが紛れ込んで頑張っている。

考古学者によれば、この惑星には現在まで9つの「夜」が来ては、その度に高度な文明が滅んでいるという。
それは何故か?
インテリゲンチャの集まりである天文台の面々ですら、その理由に気づけない。

この文明もまた滅んでしまうのか?
ある希望を提示して物語は終幕する。
ラストの数ページがこの上なく美しい。

冒頭にラルフ・ウォルドー・エマーソンの「自然」からの引用が書かれている。
その以下の一文と、原題である “Nightfall” がまるで星々のように強烈な輝きをもって感じられた。

もし星が千年に一度、一夜のみ輝くとするならば、人々はいかにして神を信じ、崇拝し、幾世代にもわたって神の都の記憶を保ち続ければよいのだろうか。


「緑の斑点」
全てが「完全な秩序」をもって存在するセイブルック星。
まるで惑星全体がひとつの生命体である様に。
石ころ一つがその細胞である様に。
なによりやっかいなのは、この「セイブルックくん」が非常におせっかいであるということだ。
個々という断片で存在する地球人を憐れみをもってみている。
そして果敢にも兄弟を作ろうとする。
果たして侵略なのか善意なのか……。
その過程がスリリングであり、また滑稽にも映る。

秩序は無秩序を、個性の素晴らしさを理解できなかったのだ。


「ホステス」
主人公のローズは、なぜ自分が結婚できたのかということに疑問を抱いている。
この感覚、直観、違和感。
それは何故か、どこからくる疑問なのか。
全ては「ホステス」という存在になる為に……。
その違和感の理由を知ったローズの気持ちが伝わってきて、なんともいえず呆然としてしまった。


「人間培養中」
天才ゆえに気づいてしまった恐怖。
アシモフが 『ロボットと帝国』 でも描いていた危機感。
シャーレから出てしまった問題は、今まさに突きつけられている。


「C-シュート」
面白い!
密室劇ならではの、厚みをもった登場人物たち。
それぞれに当てられるスポットライトの集約が物語の鍵になる。
小気味よいストーリーテリングに引き込まれていくと共に、ラストではあたたかい気持ちになった。


SFで描かれる異星人との関わり。
お互いを知り、それを認めようとする姿勢の大切さだけはフィクションではない。
悲しく不毛なニュースに触れる度にそう思う。
見ているだけでなく、まずは自分から実践してゆかなければ、とも。




| アイザック・アシモフ | 02:55 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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『ロボットと帝国』

少し、前作 『夜明けのロボット』 から時間を空けてから読んだ。
ちょこっとでいい、本書のヒロインであるグレディアの気持ちに近づきたかったのだ。

自分の、そして愛しい人の子孫に会うのはどんな気持ちだろう。
長い時を生きるのは幸せなことばかりではなさそうだ。

改めて、イライジャ・ベイリの存在の大きさを感じずにはいられない。
勇気あるイライジャ!
人間臭く、魅力的なイライジャ!

反対にアマディロの小者っぷりには泣けてくる……。
周りの人は大変だな、としか思えなかった。
トップが無能だと前進しない、という悪しき現象の見本の様だ。
可哀想なヴァジリア……。
苦労ばかりさせられるマンダマス。
哀しいスペーサー達。

イライジャ・イズムを受け継いだロボットが、一番に人類の未来を想って闘っているのが皮肉だ。
人間は恨みに囚われ、ロボットは未来を見る。

「イライジャのしたように」「イライジャの考えたように」と、ロボットは口にする。
セツラーと呼ばれる地球を飛び出した植民者たちに未来を見い出しながら。

その過程で、遂にロボットは自ら「ロボット工学第零法則」に辿り着く。
人間によって作られ、『われはロボット』 で提示された「ロボット工学三原則」を更に突き詰めたものである。
イライジャの意志を受け取ったのは、スペーサーでもセツラーでもなく、ロボットだったのだ。

ヴァジリアとの対決は、本書のなかでも白眉だ。
彼女と皮肉な関係にあるグレディアにも、その勇気に賞賛を贈りたい。

「見られること」をタブーとするソラリアで育ち (『はだかの太陽』)、その禁忌と苦痛を克服してオーロラで生活し、更にはセツラー・ワールドで好奇の目に晒されながらのスピーチをやってのけるグレディアの勇敢さ。
彼女こそ、長い生命を思う存分使った生き方といえるだろう。

本質的にイライジャとグレディアは似ている。
思わず「ヨシャパテ!(なってこった!)」と言いたくなってしまうほどの大胆さが。

読後感は心細いものだった。
人類の発展の方向はこれしかないのだろうか……。
なんだか淋しい。
21世紀の今、この状況を知っていたら、アシモフはまた別の未来を描いたのではないかと思うのだけれど。
地球に貼り付いて、今とこれからを生きる人間のひとりとして、そう考えたいのだ。




| アイザック・アシモフ | 20:24 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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『夜明けのロボット』

ロボットによる人間賛歌。

この一語に尽きるのではないだろうか。

ベイリ刑事、ついにオーロラへ下り立つ!
惑星・オーロラは昔々宇宙開拓の先陣を切った地球人が住み着いた場所である。
全ての宇宙人(スペーサー)の故郷。
宇宙人と地球人が別の種族ともいえるほど、知覚も、感覚も、寿命さえも違ってしまう前の黎明期の時代を知る惑星である。

今回の事件は「ロボット殺し(ロボティサイド)」だ。
宇宙でたった一人しか製造方法を知らない、人間そっくりのヒューマンフォーム・ロボットが機能停止状態になったのだ。

またしても難事件だが、ベイリはもう一人ではない。
相棒、ダニールとの再会。
ソラリアで出会ったグレディアとの再会……。
新たには、ロボットのジスカルドとの出会い。

面白いのは勿論のこと、ラストでは静かで爽やかな感動に包まれた。
ベイリの心は既に「鋼鉄都市」にはない。
風を感じ、木々がさざめく太陽の下にある。

「夜明け」とは一体誰にとっての「始まり」だろうか。
読めば答えは明白である。

物語の性質上、これ以上は書くのを控えるが「今」を生きることが眩しく想えた。




| アイザック・アシモフ | 18:47 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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