ちった図書室 ~Bibliothèque de Cittagazze~

手当たり次第に読んだ本を手当たり次第に記していこうという、意気込みだけは凄い図書室。目指すは本のソムリエです。

| PAGE-SELECT |

≫ EDIT

『ファントム』

歳の離れた姉妹、ジェニーとリサ。
ジェニーが医師として開業している小さくて穏やかな町、スノーフィールド。
母親が亡くなった事を切っ掛けに、二人はそこで新しい暮らしを共に始めるはずだった。
年齢と同じくらい離れてしまっていた年月を、ゆっくりと埋めていく。
相性はバッチリ。
滑り出しは上々。
車の中での会話も弾み、楽しい生活の予感に包まれる。

しかし、リサを連れて帰ったスノーフィールドの町からは、忽然と人間が消えていた。
いや、ただ消えたのではない。一夜にして「あらゆる命」が消えていたのだ。
医師であるジェニーはまず、病原菌などの生物災害「バイオハザード」を疑うが、調べていくうちにその可能性は消えていく。

死体は、あったり無かったり。
恐怖と驚きに満ちた顔がオーブンに入っていたり……。
これが「災害」であるはずがない。
警察が到着してホッとしたのも束の間……更なる恐怖が襲い掛かる。

ジェニーは医師だけあって肝が据わっている。
妹を守らなければ、という想いもある。
例え遺体が親しい友人や知人だとしても、その想いがジェニーを支える。
そんな姉を尊敬し、自分を奮い立たせるリサ。
二人の心情が痛いほど伝わってくる。

駆け付けた保安官、ブライスのキャラクター作りがまた巧みで、たちまち頼りにしてしまう。

隔絶された町で起こる群像劇。
少しずつ明らかになる「敵」の正体。
「敵」からの要求。
そして……。


ページを捲るのももどかしい、と思う本はあるけれど、『ファントム』は“瞬きするのももどかしい”本だった。
緩急のつけ方が流石はクーンツ!
怖かったぁぁ……!





| ディーン・R・クーンツ | 19:29 | comments:2 | trackbacks:0 | TOP↑

≫ EDIT

『ストーカー』

ただの「ごっこ遊び」のはずだった。
同じ時間に同じ通りから出発したヴァン。

ねぇ、追ってきたらどうする?
僕たち、スパイに狙われてるんじゃない?

親子になったばかりの二人が始めた、そんな「遊び」。

だが、「平和な遊び」は「悪夢のような現実」になる。
なぜ?
主人公は自他共に認める平和主義者。
狙われる理由はないにもないはずだ、そう思い込んでいた。

しかし、あったのだ。
全くの一方的な、狂気としかいいようのない理由が。

本作が発表された1970年代当時は、ホラーで済んでいたのかもしれない。
しかし、残念なことにそっくりそのまま時代が追い付いてしまった。
書かれているなにもかもがニュースで報じられた事件を彷彿とさせる。

それが何より恐ろしい。
もう本のストーリーだと安穏と過ごす時期は過ぎてしまったようだ。


「いったい世の中どうなっちまったんだ」
「といっても、世の中の全部が全部というわけじゃありません」






| ディーン・R・クーンツ | 03:02 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

≫ EDIT

『ウィスパーズ』

「そうだ。ささやき、ささやき、ささやき。まわりじゅうで」

ナイフとワインが、想像の力で不気味にちらつく。

アメリカ西海岸、ナパバレーでワインパーティー。
ナイフで切った美味しいチーズと共に味わいながら、お喋りを楽しむ。
ささやきの様な風がそよぐ。

そんなのどかな光景が、クーンツにかかると一転恐怖に包まれる。

ワインは殺意のきっかけに。
ナイフは凶器に。
お喋りは狂った会話でしかなくなる。
そして、ささやきは……。

ヒロインの抱えるトラウマや、生活感溢れる登場人物が一気にストーリーを駆けていく。
チョイ役にまで厚みをもたせた描写に「この人物はどう関わってくるのだろう?」と興味を煽られる。

犯人はクレイジーだ。
だが、その生まれや成長過程を想像すると、あまりの激しさと悲しさに私の思考がストップをかける。
死んだ自分と会話をする男。
自分を失うという苦痛にまでさいなまれた男。
そして、ささやき。
それが犯人だ。

あっという間に読み終えたけれど、怖ろしさはしばらくまとわり付いて離れなかった。
あの、ささやき の様に。


 

| ディーン・R・クーンツ | 22:12 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

| PAGE-SELECT |