ちった図書室 ~Bibliothèque de Cittagazze~

手当たり次第に読んだ本を手当たり次第に記していこうという、意気込みだけは凄い図書室。目指すは本のソムリエです。

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『輝くもの天より堕ち』

本書は上質のSFであり、孤島型のミステリでもある。
そして、生き物の「愛」と「美しさ」「残酷さ」に溢れている作品だ。

再読して改めて圧倒された。
ティプトリーJr.作品のなかでは本作が一番好きかもしれない。
喜怒哀楽の全てを、言葉では表せない魂の根源的な部分を掴まれ、揺すぶられる。

心を揺らぎながら過ぎていく時間は、今思うとまるで「ノヴァ前線」のようだ。

星の最期の光であるノヴァ。
その「ノヴァ前線」の光の中では「時間揺動」が起きるという。
神秘的な体験を求めて、悲しい歴史のある惑星ダミエムに降り立つ人々。

幾重にも仕組まれた事件と共に表れる、様々なカタチの愛。
精神的な、愛。
肉体的な、愛。
そして、それを貫くカタストロフィー。
惑星ダミエムで起こった出来事は、スリリングで、美しくて……、とても苦しい。
「殺された星」の最期の輝きと共に、それらは頂点に達する。


ラスト数ページを、何度も読み返す。
ここにこそ、「心と体を繋げている一番奥のデリケートな部分」がある。
魂をグッと掴まれて、押さえつけられて、息が出来なくなりそうだった。


神々よ、どうかわたしに空気を ――


ヒロインが発した言葉は、私の言葉でもあった。
だから、私も思わず叫びたくなる。
パクパクと水面から口を出す魚のように……「どうか私に空気を!」、と。


ティプトリーJr.は東洋的思想の持ち主であると思う。
「生老病死」をSFの形で表す手腕は、同志ともいえる作家ル=グウィンにも通ずるものがあるように感じる。

正直、まだ噛み砕けていない部分も多い。
初めて読んだ時とは少し印象が違った。
もう一度読む時には、また変わるだろうと思う。
もう少し意味を理解できるように、自己研鑽をしていきたい。
このあたりも、ル=グウィンとの共通点だ。


私にとって、抱きしめたくなる愛しい一冊。
カバーデザインも素晴らしい!
こういう感情に出会えるから、私は本を読み続けている。

そして、今日も本の世界に飛び込むのだ。
それにはこの言葉がピッタリ。

グリーン、ゴー!





| ジェイムズ・ティプトリーJr. | 04:56 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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『老いたる霊長類の星への賛歌』

まず、「序文」があのル=グウィンであることを書いておきたい。
これは両者のファンにとってはとんでもなく素晴らしいサプライズだ。

そんなわけで、いきなり心を鷲掴みにされた本書。
そして何よりもル=グウィンという作家に「序文」を依頼したのにも頷ける。
この短編集には「性」の恐ろしさと美しさが凝縮されているからだ。

「汝が半数染色体の心」「一瞬のいのちの味わい」に見事に昇華されているといっていい。
違ったアプローチで「性」を描きながら、作家としての成長をみることができる例だ。

これら2作を比べると、やはり「一瞬のいのちの味わい」が際立つ。
長い宇宙生活での息詰まる日々に訪れた希望。
「禁欲」が強いほど「渇望」も強くなる。
大地への渇望、生命への渇望、その先にあったのはショッキングな程の性。

息が切れる様な強い強い「渇望」の先にあったもの。
それが宇宙単位での受精。
どんな形で行われるかはどうか読んでいただきたい。

そのなかで作者が「もののあわれ」と書いたのに驚いた。
万物の無常感だと。

日本人でもわかりづらいこの言葉の意味を、もう一度考えさせられた。


名作「ヒューストン、ヒューストン、聞こえるか?」は面白いばかりでなく、どこかひんやりとした冷たさを感じる。
とある未来に来てしまった男性宇宙飛行士の物語だが、私はどうしてもやはり「女」の視点からしか読めない。
男性の意見が聞いてみたいが、私も感じた「ひんやりとした冷たさ」がそれなのだろうか。

エンタテインメントとしてドキドキしながら読みつつも、「自分は女なのだ」と強く感じた。


「すべてのひと再び生まるるを待つ」はなかなか手ごわい。
まだ消化しきれていないのだが、盲目の美しい少女が大地に立つ姿を想像するのはゾッとする。
不死の彼女が待つのはどんな生命なのだろう。
そして、どんな未来が……?




| ジェイムズ・ティプトリーJr. | 20:28 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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『愛はさだめ、さだめは死』

「これでもか!」という程にティプトリーらしさが詰まった12編。

まず、本書のタイトルにもなった「愛はさだめ、さだめは死」に圧倒される。
【原題】"Love Is the Plan the Plan Is Death"
内容はあるエイリアンの種族の愛を描いたものだが、ティプトリーの生涯、特に最期を暗示しているようにさえ思える。

息切れのするような、無駄の無い怒涛の展開で繰り広げられる悲劇的サイバーパンク「接続された女」
恐ろしい連れを伴っての「エイン博士の最後の飛行」

異星での人類の絶望感と行動を描いた「そしてわたしは失われた道をたどり、この場所を見いだした」「最後の午後に」

どれも圧巻の迫力をもって読者に迫ってくる。

なぜかニヤリとさせられる「乙女に映しておぼろげに」と、星新一のショートショートを彷彿とさせるような「アンバージャック」も魅力的だ。

そのなかで、私がのめり込むように読み、読後打ちのめされたように感じたのは「男たちの知らない女」だ。
舞台が作者の思い入れの強いキンタナ・ローの海の上だということも特筆すべきだろう。
『すべてのまぼろしはキンタナ・ローの海に消えた』

「女はただ生き残ろうとしているだけ。男の作った世界というマシンの隙間で、一人二人とばらばらに生きているの」

「わたしたちをオポッサムと考えてみたらいいのよ、ドン。オポッサムが世界中で生きているのを知ってる?ニューヨーク・シティでさえも」


なんて強烈なセリフだろうと思う。
世界の隙間で生きるオポッサムの一人として、震撼せずにはいられなかった。
そして、物語の中で親子のオポッサムがとった行動にも。




| ジェイムズ・ティプトリーJr. | 15:26 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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