ちった図書室 ~Bibliothèque de Cittagazze~

手当たり次第に読んだ本を手当たり次第に記していこうという、意気込みだけは凄い図書室。目指すは本のソムリエです。

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『ぼくが死んだ日』

帰らなきゃ。
だって、ママが夜中の12時までに帰りなさいって言ったから。
もう16歳なのに。
けど、ママが心配してるっていうのは分かるし「あんなこと」をやっちゃった後だから仕方ない。

だから、マイクはシカゴ郊外の道路を自宅に向かって猛スピードで疾走していた。
……車のヘッドライトに女の子が照らされるまでは……。

怪談話のセオリー通り、マイクは仕方なく彼女を車に乗せる。
名前はキャロルアン。
56年前に死んだという。

キャロルアンにはある役目があった。

それは「子供達が眠る墓地」に案内する事。
そして、マイクの役目は「子供達の話を聞く」事。


そうしなきゃいけない。
聞いてもらわなきゃ逝けない。
だって……

「あたしたちはみんな、自分の話をだれかに話す前に死んでしまった。この世ではただの幽霊かもしれないけれど、あたしたちの話をだれかが覚えててくれて、話してくれれば、それは本当にあったこととして根をはり、生きつづけることができる」


今回、話す順番がきた子供達には「ある共通点」があった。

9人の子供達は死んだ年代も年齢も様々。
自然な口語体で、リレー方式に語りだす。
まるでシカゴの年表をバラバラに見ているようだ。

その「共通点」を見つけることが目的だったのかもしれない。


そして差し込む陽光。


「じゃあまた会おうな、アホやろう」
「そんなにすぐじゃないけどね」



眩い光のなか“命”を愛おしく思いながら、怖かったはずの墓地を去るマイク。


まだまだ順番待ちの子供たちが大勢いるに違いない。

「きっと来年はあたしたちの番ね」
「そうだといいけど……」
「あーあ、早く話してーな」

墓石の周りでは、そんな声が囁かれているのかも……。





| ファンタジー・幻想 | 22:13 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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『百年の孤独』

読んだ。
ぐったりした。
百年分だもの、そりゃくたびれるよ。

舞台は中南米。
この物語は中南米でしかあり得ない。
空気、土壌。
地球上で、ここだけ。

その湿気を含んだ大地に、ホセ・アルカディオ・ブエンディアと妻のウルスラが「マコンド」という名の村を切り拓いた。
やがては町として栄え、百年の後に再び土と植物の中に没していく。
マコンドの百年はブエンディア家の百年なのだ。
確かに孤独……。

系譜の中心になるのは女性だ。
ドンと構えるウルスラ。
生涯生娘で、意地の悪いアマランタ。
そのアマランタにライバル視されて意地になってしまうレベーカ。
ひたすら家に奉仕して、去っていくサンタ・ソフィア・デ・ラ・ピエタ。

ウルスラが構えた屋敷は立派だが、植物と赤アリに浸食されている。
草をむしり、赤アリを退治しなければならない。

マコンドには、時折ジプシーの一団がやって来る。
その一人、魔法使いのようなメルキアデスは、外部から村に深く影響を及ぼす存在だ。
死んでもブエンディア家と共に在る。

この家系の男性名はどれも似ている。
「誰と誰の子供なんだっけ?」と巻頭の家系図を何度も見たり、読み返したりする。
けれど、割とどうでも良かったりする。
ブエンディアの名前と、それに関わった人々の物語なのだと、ザックリ考えていれば良いような気がする。

森を切り拓いて作られたマコンドは、ブエンディア家の最後の一人と共に森に還る。
植物と赤アリに食われてしまったから。


面白いわけでも、楽しいわけでもない百年を見つめる。
感じるのは「吸引力」だ。
「読ませる力の凄さ」を感じずにはいられなかった。
ガルシア=マルケスは魔術師的語り部だ。

なんとなく、『千夜一夜物語』のシェヘラザード姫を連想した。
明日の話しが気になって、気になって、仕方なくなる。


全てが森に還ったあと、ウルスラに「お疲れ様」と言いたくなった。
“砂糖ぬきのコーヒー”を淹れてあげたくなった。
いや、それとも、砂糖がたっぷり入った甘い方がいいかしら。





| ファンタジー・幻想 | 07:37 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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『どこにもない国 ―現代アメリカ幻想小説集』

「編・訳/柴田元幸」!
これだけで飛びつかずにはいられない。
全体的に、ル=グウィンやエンデの世界を感じる短編集。

エリック・マコーマックの「地下道の査察」は悪趣味具合が結構好きだ。

レベッカ・ブラウンの「魔法」は深い!
愛ってなんだろう。
愛されるってなんだろう。
愛するってなんだろう……。

読んでて怖かったのはニコルソン・ベイカーの「下層土」
後から考えると、なんでそうなるのかとか全然分かんないんだけど、それがまた、ね。
柴田氏の洗練された訳が恐怖感を倍増させているようにも思う。

なかでも、最もインパクトがあり衝撃を受けたのが、ピーター・ケアリーの「"Do You Love Me?"」である。
愛されなければ消えていく……。

我々は他人の愛を通してのみ存在する、そういうことだ。

そう言って消えていく姿が「視える」。

心が深い穴に落ちていく。
消えないで、と叫んでいる。
消えてしまったあなたを、私は愛していなかったの?
でも、愛し方が分からない……。
消えないで。
消えないで。
愛するから、消えないで。

私のことを、消さないで……。


あなたには、「大切な人」が見えていますか?
あなた自身のことは……?





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