ちった図書室 ~Bibliothèque de Cittagazze~

手当たり次第に読んだ本を手当たり次第に記していこうという、意気込みだけは凄い図書室。目指すは本のソムリエです。

| PAGE-SELECT | NEXT

≫ EDIT

『金曜日の砂糖ちゃん』

酒井駒子ワールドを、じっくり味わえる3編。

明るいけれど、なんだか暗い。
暗いけれど、たぶん明るい。
なんだか、サイレント映画を観ているような感覚になる。

「金曜日の砂糖ちゃん」
原っぱでお昼寝をする女の子。
死んだように動かず眠ってる。
砂糖ちゃんは人気者。
お昼寝姿を見ているだけで、満足してくれているうちはいいけれど。

「草のオルガン」
夕方、音が出ないオルガンを見つけた男の子。
音はでないけれど、それがいい。
鍵盤は音じゃないものを連れてくる。
知らない道を通るのは、ちょっとした冒険だ。

「夜と夜のあいだに」
真夜中に目覚めた小さな女の子。
計画していたのか、思いつきなのかは分からない。
ただ、心にあったことがひとつ。
準備をして……出発……。


じんわり、じんわり、心に沁みこむ。
温かい紅茶に、角砂糖をポチャポチャと入れる。
溶けて崩れていく角砂糖を、ただ静かに見ているような感覚。

パタンと本を閉じると、映画が終わってもカラカラ回り続けるフィルムの音が聴こえる気がした。
角砂糖はまだ、溶けきっていない。




| 絵本 | 21:47 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

≫ EDIT

『水の女 溟き水より ― From the Deep Waters』

オフィーリア

演劇や絵画、小説のなかで、度々出会う哀れな乙女。
恋人に突き放され、父を殺され、心狂わせる少女。
手折った花を抱きながら沈んでゆく、美しい身体。

2008年、渋谷で行われた「ミレイ展」で彼女に出逢う事が叶った。

歌を口ずさむ薄く開けられた唇。
虚ろな瞳。
水に囚われつつある身体。
描きこまれた草花は、失われゆく命と対比されるように鮮やか。
私の脚にまで伸びてきた蔦が絡みついたように、絵の前から動くことができなかった。


ジョン・エヴァレット・ミレイの“オフィーリア”
ophelia


本書には、様々な画家が描いた「オフィーリア」が載っている。
それぞれの捉え方が解るのも魅力の一つだ。
なにしろ、シェイクスピアがオフィーリアの最期を台詞で済ませてしまったのだから、想像する余地は無限にある。

その中には、「シャロットの女」や「ユリシーズとセイレーン」等で有名なジョン・ウィリアム・ウォーターハウスも。
ウォーターハウスの絵は物語性が強く、私の大好きな画家の一人だ。


ウォーターハウスの“オフィーリア”
ophelia-w


他にもマーメイドやサイレン、水に映った自分に恋するナルキッソスとそれを見つめるエコーなどなど……。
魅力的で蠱惑的な絵画が説明抜きで載っている。
巻末に解説があるにはあるが、読まなくても十分に楽しめる。

そう、自分で楽しめばいい!

制作の背景などで想像力を邪魔されることなく、自由に楽しむことができるのだ。
興味を持てば調べればいい。
私はこういうスタイルをとても好ましく思う。

さあ、水の世界へ……!
ただし、努々引きずり込まれませんよう、お気をつけて。




| アート | 23:26 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

≫ EDIT

『蒼い時』

旅行に興味がないエドワード・ゴーリーが、スコットランドへ行った。
その旅に関して書かれて(描かれて)いるとの事。

ゴーリーといえば、ヒゲモジャで、長い毛皮のコートを着て、足元はスニーカー。
この姿しか思い浮かばないから道中では一体どんな格好をしていたのだろう。

そんな想像もつかないゴーリーの頭の中は、やはり想像するのが難しい。

まず、この犬の様な……?……かわいいキャラクター。
2匹は楽しく……?……おしゃべりしてる。

楽しかったのかしら。
本にしちゃうんだもんね、楽しい旅だったんだきっと。
良かった、良かった。

そんな風にひとつずつ想像してみる。

今まで読んだゴーリー作品の中で、一番よく解らない。
だから、やっぱりちょっとずつ想像してみる。


折しも参院選の頃に読んだから、ついついこのセリフに目が留まってしまった。
ガッカリ選挙だったから特に。

違うふうになると思ってたのに。
<まったく同じに/とにかく違うふうに>なったじゃないか。


I thought it was going to be different;
It turned out to be(,) just the same.



そうそう、選挙といえば、イギリスってEUから離脱するんだよね。
まさにゴーリーが出掛けたスコットランドが独立の動きを見せているけれど、どんな事になるのかな。
それから、2016年のウィンブルドン大会では、スコットランド人のマレーが優勝。
表彰式でキャメロン元首相がブーイングを浴びてたのには驚いた。

それって沈没よりひどい運命じゃないかな。
でもこれ以外のなんてないぜ。


It seems to me a fate worse than sinking.
But there isn't any other kind.




そうやって世界を、身の回りを、勿論自分自身を見て思うのはこのセリフ。

僕は絶対 他人の前で君を侮辱しない。
君の言うことはすべてつながってるってこと 僕はつい忘れてしまう。


I never insult you front of others.
I keep forgetting that everything you say is connected.



世界中が、繋がっている。

途切れた文字の

 あいしあお 。
   obe one anoth  .



名訳で知られる柴田元幸氏も、この本の訳出には苦戦がみられる。
でも、精一杯の愛おしさに満ちている。

最初は全く解らなかった。
理屈を並べたりしてみた。
でも、読むにつれ、だんだん「かわいい」と思うようになった。

純粋に 「かわいい」 と。

この不思議な感覚は、ぬいぐるみを可愛がっていくのに似ている。
何とも思っていなかった犬(?)のぬいぐるみを、今はギュッと抱きしめたい。
そんな気持ち。





| エドワード・ゴーリー | 00:39 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

| PAGE-SELECT | NEXT