ちった図書室 ~Bibliothèque de Cittagazze~

手当たり次第に読んだ本を手当たり次第に記していこうという、意気込みだけは凄い図書室。目指すは本のソムリエです。

| PAGE-SELECT | NEXT

≫ EDIT

『ハッピー・マニア』

前に一度読んだ。
その時はシゲタに全然共感できなかったし、ナンダコレ状態。
途中で読むのをやめてしまった。

しかし、今。

イタイ!
心が痛い!
アイタタタ!!


私にナニがあったのか。
よく分からないけれども、シゲタに共感する部分が……ある。
どうしよう。
オンナとしてレベルが上がったのか?下がったのか!?

に、人間として経験を積んだ……。
コレだ。これにしよう。


さて、人間として経験を積んだ私は、一気に全巻読んでしまった。

倫理的には酷い話で、それは分かってるし変わらない感想だ。
でも、何かが刺さる……。痛い。

暴走してナンボの女の話なので、物語は加速する一方。
前に途中で脱線してしまった私は健康的であり、未熟だったのかもしれない。
しかし、今は乗れるぞ、暴走特急!!

でもね、シゲカヨはラッキーなんだよ。
当たり前だけど、凄く非現実的。
親友のフクちゃんだっているし、幸せの青い鳥なハイスペック・タカハシがいる。
ズルイぞ、シゲタ。
普通いない。
タカハシは幻想の産物だ。

色々と暴走したあげく、一周回って結婚に至るシゲカヨ。
その式でも
「あー、彼氏欲しい!!」
って言っちゃうんだから凄い。
笑った、笑った。

この清々しいまでの正直さ、本音の描き方、抉り出し方が、安野モヨコ作品ならではの凄み。
出来そうで出来ない技だと思う。

ハッピー&トキメキ・ハンター、シゲカヨ。
レビューでさえ暴走させる女、シゲカヨ。
イタイ部分を突いてくる女、シゲカヨ。

幸せになって、とは思わない。
一生足掻いていてほしい。
最期のことばも「彼氏欲しい」って言ってほしい。

そんなんだったら、まさに ウ~~~、マッシモ!!








| 安野モヨコ | 08:11 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

≫ EDIT

『晩菊 ―女体についての八篇』

安野モヨコが選び、「描きたい」と思った八編に住む女たち。
それぞれに挿絵が描かれる。
『さくらん』『バッファロー5人娘』、『鼻下長紳士回顧録』、と娼婦を多くテーマにする作家であり、女性なので興味深かった。



「美少女」 太宰治
“美少女”というのは“自分が美しい”と知っていて初めて完成するのではないかしら。
それは“美人”も同じ事で、「晩菊」に通じる様に思う。
「美少女」は、やがて「晩菊」になるのかもしれない。


「越年」  岡本かの子
平手打ちから始まる恋……。
なんだか凄い。
しかも、男から女に。それも顔に。突然に。

私まで引っぱたかれた様に驚いてしまった。
なんなんだ、この男は。
今の時代だと傷害罪である。
それでも、ロマンスとして面白く読めてしまうのが不思議だった。
やっぱり「時代」なのかなぁ……。


「富美子の足」 谷崎潤一郎
ごめんなさい。無理……。
足フェチなのよね、うん。
好きなのよね、女性の足が。
そして、同好の士を得て加速してしまったのよね、うん。
対象にされている女が、迷惑そうにしながらも冷めているのがなんだかリアル。
安野さんの挿絵が素敵で救われた……。


「まっしろけのけ」 有吉佐和子
好き!
ストーリーもそうだが、キリッとした文体が好きだ。
鮮やかに、文化と生命のバトンパスが描かれる。

一方は、サンドレスを着た大学生のお嬢さん。
一方は、江戸の風情を残した職人。
どちらも自分の居場所でスッと立っている。

若者は老人を、敬意をもって。
老人は若者に、瑞々しさを感じて。

どちらが良いわけでもなく、ありのまま、自然に。
繰り返されてきた生命と文化の繋がりが、ユーモラスで、哀愁を帯びて描かれる。
「生きていく」ってこういうことなんだな。


「女体」 芥川龍之介
なぜ、芥川はこの作品を書こうと思ったのか。
それが一番知りたい。
「なんだ。裸婦というのは存外美しいものだなぁ」とでも思う事があったのだろうか。
感想文なのか、これは。というくらいドライである。
安野さんが書いているように、ムッツリスケベなだけかもしれないが。


「曇った硝子」 森茉莉
読みにくいったらない。
二行読んでは一行戻る。
乙女が発した夢見る雲を、拾い集める様にして読んでいく。

主人公も、森茉莉も、困った人だなと思う。
ただ、それを少し冷静に観察している森茉莉の気配も感じられる様な気がした。


「晩菊」 林芙美子
美人が“美人を作っていく”作業が、とても面白かった。

老いた自分の元に、昔の男が来るという。それまでの2時間。
まず、風呂に入って、氷で顔をマッサージして上等のクリームを塗る。
化粧よりも効くのは少量の冷酒。
目元が紅く染まり、瞳が潤む。
着物の着付けも、より女らしく工夫し、爪の先まで「美しく見せる」ことを怠らない。
「女として見せる」ことだけを考える。

男とのやりとりも描かれているけれど、何よりもこの「女づくり」が面白い!
表紙を飾っているのは、この作品の挿絵のカラー版だ。
私は色をつける前の方が好みだな。


「喜寿童女」」 石川淳
阿部定が童女になっちゃった事件、という感じ。
八編のなかでは一番ストーリー性があって、読み物としては面白い。
しかし、「晩菊」の方がインパクトがあるので印象が薄い。

幽玄の世界と現実。
ジャンルとしては圧倒的に前者の方が好きなのに、並べられると違って感じる。
面白い読み方と発見があった。






| 安野モヨコ | 19:43 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

≫ EDIT

『リバーズ・エッジ』

「あたし達 仲よしだったけど 何もルミちんのこと 知らなかったね」

よくあるセリフだけれど、これに尽きるのではないかと思った。
何を知っていれば「知ったこと」になるのだろう。
友達にだって、自分にだって、言いたくないことはある。

本人だって「知らなかった」ことは沢山あるのだろうと思う。
そして、ある日突然、気が付いたりするのかもしれない。

読了後、何故か『蛇にピアス』(金原ひとみ著) を思い出した。
ずいぶん前に読んだのに。

鬱屈した日々。
だから、ピリリとした刺激を求めるのだろうか。


僕らの愛は知っていた
平坦な戦場を


平坦な戦場で
僕らが生き延びること



ある時期にしか感じない「戦場」がある。
なんとなく分かる。
私もそれをくぐってきた気がする。

ただね、そこを過ぎると、とても楽になるんだよ。
大人になって、自分の居た場所が何だったのかを、少しだけ分かった気がした。





| マンガ | 23:21 | comments:4 | trackbacks:0 | TOP↑

| PAGE-SELECT | NEXT