ちった図書室 ~Bibliothèque de Cittagazze~

手当たり次第に読んだ本を手当たり次第に記していこうという、意気込みだけは凄い図書室。目指すは本のソムリエです。

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『ユダの窓』

ヘンリ・メルヴェール卿(H・M)法廷に立つ!

密室に存在する「ユダの窓」。
これ自体はさして難しくないと思う。
H・M卿がちょこちょこヒントをくれるし。


「いいや。それが本件の風変わりなところなんじゃ。あの部屋が普通の部屋と違っているわけではない。家に帰って見てみるんじゃな。ユダの窓はお前さんの部屋にもある。この部屋にもあるし、中央刑事裁判所(オールド・ベイリー)の法廷にも必ずある。ただし、気づく者はほとんどおらん」


今回は裁判を進行しながらストーリーが進むので、それも楽しい。
H・M卿の大胆な手法を必死になって支える、いや、抑えようとする秘書のロリポップ嬢の奮闘ぶりが可愛くて好きだ。
描写はほとんどないのだけれど、躍起になってるのが伝わってくるのが凄い。
そのちょっとの描写でクスクス笑ってしまう。

語り手であるケンの妻、イヴリンもまた魅力的だ。
傍聴席での二人の会話で「ホラホラ、おじいちゃんってば、これはツライわよ~!」なんて言われると臨場感が増す。

とにかく今回はフーダニット、犯人当てに尽きる。
そして改めてタイトルを見ると……。
うわぁ、お見事!

カー作品はもう夢中になって何冊か読んでいるけれど、隙がなくてレビュアー泣かせだ。
でも、書きたいのだ。魅力的なのだ。
うーむ、がんばるっ。



 

| J.D.カー/カーター・ディクスン | 18:25 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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『ファントム』

歳の離れた姉妹、ジェニーとリサ。
ジェニーが医師として開業している小さくて穏やかな町、スノーフィールド。
母親が亡くなった事を切っ掛けに、二人はそこで新しい暮らしを共に始めるはずだった。
年齢と同じくらい離れてしまっていた年月を、ゆっくりと埋めていく。
相性はバッチリ。
滑り出しは上々。
車の中での会話も弾み、楽しい生活の予感に包まれる。

しかし、リサを連れて帰ったスノーフィールドの町からは、忽然と人間が消えていた。
いや、ただ消えたのではない。一夜にして「あらゆる命」が消えていたのだ。
医師であるジェニーはまず、病原菌などの生物災害「バイオハザード」を疑うが、調べていくうちにその可能性は消えていく。

死体は、あったり無かったり。
恐怖と驚きに満ちた顔がオーブンに入っていたり……。
これが「災害」であるはずがない。
警察が到着してホッとしたのも束の間……更なる恐怖が襲い掛かる。

ジェニーは医師だけあって肝が据わっている。
妹を守らなければ、という想いもある。
例え遺体が親しい友人や知人だとしても、その想いがジェニーを支える。
そんな姉を尊敬し、自分を奮い立たせるリサ。
二人の心情が痛いほど伝わってくる。

駆け付けた保安官、ブライスのキャラクター作りがまた巧みで、たちまち頼りにしてしまう。

隔絶された町で起こる群像劇。
少しずつ明らかになる「敵」の正体。
「敵」からの要求。
そして……。


ページを捲るのももどかしい、と思う本はあるけれど、『ファントム』は“瞬きするのももどかしい”本だった。
緩急のつけ方が流石はクーンツ!
怖かったぁぁ……!





| ディーン・R・クーンツ | 19:29 | comments:2 | trackbacks:0 | TOP↑

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『べにはこべ』

1792年9月、フランスでは「あるもの」がブームになっていた。
ギロチンである。
誰の首でもいい。王党派であれば誰でもいい。
抑圧されていた市民は「自由」「平等」「友愛」を叫びながら、誰かの首が落ちる様を何よりの楽しみにしていた。

そんな時に現れたのがべにはこべ
「貴族」というだけでギロチン台に送られそうになっている人々をイギリスに逃がしている義賊団だ。
神出鬼没、大胆不敵。
後に残されるのは「紅はこべ」の花を模した、赤い星の紋章だけ。

ヒロインのマーガリートは、かつてフランスで人気のあった女優にして才女。
イギリス人のパーシィと結婚してからも社交界で引きも切らない人気者。
平民に生まれ、兄と共に助け合い、唯一持てるものは「知識」と「教養」だと登りつめたスーパーレディだ。

しかし、である。
この才媛が、なんだか「おバカ」に見えてしまうのである。
「あの人が好きな私が好き!」状態に思えてしまうからだ。
うーん……、ロマンス色が強すぎるんだろうなぁ。

実のところ 『十角館の殺人』(綾辻行人) を読んでいる時から違和感があった。
「何故、ここにオルツィが」、と。
そして、今やっと『隅の老人』の方か!!と気が付いた。

てっきり「オルツィ=べにはこべ」だと思っていたので、私までこの義賊団にまんまと一杯食わされた気分になってしまった。
マーガリートさん、浅薄な知識で「おバカ」呼ばわりしてゴメンナサイ。





| 海外 | 02:29 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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