読ませていただき光栄です ~サン・ジョルディの日2022
4月23日は、ユネスコにも登録されている「世界本の日」。
親しい人と本を贈り合う
サン・ジョルディの日
毎年、いつものレビューとは少し趣きを変えて、お贈りする代わりに一冊ご紹介しています。
2022年はこちら!
皆川博子
『開かせていただき光栄です―DILATED TO MEET YOU― 』

この本ね、すっごいの。
何がって、引き込む力が凄い。
舞台は18世紀のロンドン。
法整備もままならず、確かな医療も確立しておらず、外科医といったら床屋と同義語。
「医者」というのは内科医のこと。
治安も悪く、コネも賄賂もなければ被害者は加害者になり、あげく労働力として新大陸アメリカに送られてしまう。
衛生面も悪い。
「住みたくない街・ナンバー1」と現代日本人のワタクシに思わせる場所に、田舎から出てきたネイサン・カレン君。
詩人になりたいという夢を抱いた若者と、華麗なご令嬢が出会って……。
ハラハラしますね。見てられないね。
しかし、危なっかしい彼は幸運にも心強い友を得る。
それが、自称“バートンズ”こと解剖医の弟子たち。
外科医のダニエル・バートンは「人体の構造が分かれば救える命が増える」という信念のもと、私的解剖教室を開いていた。
遺体に触れる解剖医に「事件ファイル」はつきもので、実在した盲目の判事、ジョン・フィールディングも加わって事態は大きく動いていく。
どうかどうか、これ以上悪い方向に進みませんように……!
そんな祈りと共に一気に読んでしまった。
一気に読んでしまう本に出会うことはあるけれど、ここからが凄いところ。
本を置いて「さて、コンビニに行くか」と、自分のスニーカーと舗装されたいつもの道路に目を落としながら十歩ほど歩き……。
「あれっ!?今って18世紀じゃないんだ?あ、ここはロンドンじゃなかったっけ」
これ、ホントに思ったんです。
本の余韻に浸るのとはレベルが違う。
だって、靴、履いてるんですよ?革靴じゃなくてスニーカー。
コンビニスイーツ食べたい、とか思ってるわけですよ。
しかも、外に出て歩いてる。
これだけの動作をしてもなお、「18世紀のロンドンに居る」と頭のどこかで思ってたんです!
んなこなたぁない。
そうおっしゃるのも無理はありません。
だって、私が一番、驚いたんだもの!
ね?凄いでしょう!!
虚実を織り交ぜる作者の筆力、登場人物の生活感。
それに取り込まれてしまうマジックを、是非とも味わっていただきたい!
毎日、現実を受け止めきれないニュースが続きます。
今年は特に夢中になれる本を。それも、タイムトリップできる本を選びました。
ミステリの性質上、殺人事件は起こります。
それでも、「現実と向き合おう」「より良い未来の為に頑張ろう」という登場人物たち。
平易なことばですが、今、とても必要とされることのように思います。
最後に一言。
「読んでいただき光栄です」
続編も一気に読むのがオススメ。
特に『アルモニカ・ディアボリカ』は読みましょう!
親しい人と本を贈り合う


毎年、いつものレビューとは少し趣きを変えて、お贈りする代わりに一冊ご紹介しています。
2022年はこちら!
皆川博子
『開かせていただき光栄です―DILATED TO MEET YOU― 』

この本ね、すっごいの。
何がって、引き込む力が凄い。
舞台は18世紀のロンドン。
法整備もままならず、確かな医療も確立しておらず、外科医といったら床屋と同義語。
「医者」というのは内科医のこと。
治安も悪く、コネも賄賂もなければ被害者は加害者になり、あげく労働力として新大陸アメリカに送られてしまう。
衛生面も悪い。
「住みたくない街・ナンバー1」と現代日本人のワタクシに思わせる場所に、田舎から出てきたネイサン・カレン君。
詩人になりたいという夢を抱いた若者と、華麗なご令嬢が出会って……。
ハラハラしますね。見てられないね。
しかし、危なっかしい彼は幸運にも心強い友を得る。
それが、自称“バートンズ”こと解剖医の弟子たち。
外科医のダニエル・バートンは「人体の構造が分かれば救える命が増える」という信念のもと、私的解剖教室を開いていた。
遺体に触れる解剖医に「事件ファイル」はつきもので、実在した盲目の判事、ジョン・フィールディングも加わって事態は大きく動いていく。
どうかどうか、これ以上悪い方向に進みませんように……!
そんな祈りと共に一気に読んでしまった。
一気に読んでしまう本に出会うことはあるけれど、ここからが凄いところ。
本を置いて「さて、コンビニに行くか」と、自分のスニーカーと舗装されたいつもの道路に目を落としながら十歩ほど歩き……。
「あれっ!?今って18世紀じゃないんだ?あ、ここはロンドンじゃなかったっけ」
これ、ホントに思ったんです。
本の余韻に浸るのとはレベルが違う。
だって、靴、履いてるんですよ?革靴じゃなくてスニーカー。
コンビニスイーツ食べたい、とか思ってるわけですよ。
しかも、外に出て歩いてる。
これだけの動作をしてもなお、「18世紀のロンドンに居る」と頭のどこかで思ってたんです!
んなこなたぁない。
そうおっしゃるのも無理はありません。
だって、私が一番、驚いたんだもの!
ね?凄いでしょう!!
虚実を織り交ぜる作者の筆力、登場人物の生活感。
それに取り込まれてしまうマジックを、是非とも味わっていただきたい!
毎日、現実を受け止めきれないニュースが続きます。
今年は特に夢中になれる本を。それも、タイムトリップできる本を選びました。
ミステリの性質上、殺人事件は起こります。
それでも、「現実と向き合おう」「より良い未来の為に頑張ろう」という登場人物たち。
平易なことばですが、今、とても必要とされることのように思います。
最後に一言。
「読んでいただき光栄です」
続編も一気に読むのがオススメ。
特に『アルモニカ・ディアボリカ』は読みましょう!
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