ちった図書室 ~Bibliothèque de Cittagazze~

手当たり次第に読んだ本を手当たり次第に記していこうという、意気込みだけは凄い図書室。目指すは本のソムリエです。

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御簾と牛車のディスタンス ~サン・ジョルディの日2021

ご無沙汰しております。

4月23日は、ユネスコにも登録されている「世界本の日」です。
親しい人と本を贈り合う サン・ジョルディの日

さっそく、ご紹介いたします。


『与謝野晶子の源氏物語』 (妙訳版)

yosanogenji


『源氏物語』
与謝野晶子
この二行だけでものすごいパワーではありませんか。
とにかく男前です。

なぞらえれば
「ああ 平安の野は 君もコクリコ われもコクリコ」
いえいえ、フランスではなく日本なのだから、コクリコは桜でしょうか。

その男前ぶりたるや、嫉妬のあまり生霊と化してしまう六条御息所でさえ美しい。
抑制のきかない自分を「あさましい」と恥じる姿が、なぜかカッコイイ!

私が好きな登場人物は花散里。
光源氏が、お気に入りの妻たちを住まわせるために爆誕させた六条院でも、花散里はその賢婦人ぶりが際立ちます。
容姿はイマイチとのことですが、他の方々がアイドルやパリコレモデルばりなのでしょうから、十人並みなのではないでしょうか。
本当に残念な感じだと、末摘花みたいに「鼻が赤い」とか、どこかのトナカイみたいにディスられますし。

妙訳版(ダイジェスト版)なのでサクサク読めるのも、本書の魅力。
あんまりにも「宮」が多いので「どの宮?」と困惑しても、少し読み進めれば分かります。

出家したいとか言ってるけど、自分でも「気が多いから無理」って分かってる光源氏に「ふふっ」と笑っていたら亡くなってしまって「あら~」と思ったり。

若者からは、宮中だと肩がこるし飲み足りないから二条院に行こう、などと二次会に使われたり。

「妻」のところから帰ったら「本妻」が雨戸まで閉めてガチギレしてるのに、なんだかのんびりしてる人がいたり。

本当に本当に、人間って変わらない。
そりゃあ、立場や時代で色々ありますけれど「心」の部分は変わらない。
平安の頃から人が人を想うことは変わらないのだなと強く思います。

良くも悪くもアグレッシブな人ばかりが目立つけれど、藤原惟光のように支えてくれる人があっての光源氏。
誰も彼も、迷惑をかけたりかけられたり。
想ったり想われたり。

「浮生は夢の如し」とは申しますけれど、そこにはギュッと詰まった日々があります。
そこからは「儚さ」よりも、「力強さ」「愛おしさ」を強く感じます。

そうやって繋がってきた「今」。
だから「大丈夫」。

今年に入って家族が救急車のお世話になったり、身内が入院したり、色々です。
私自身、体調を崩し気味で活字を追うのがしんどかったり。

でも、大丈夫。
自分に出来ることを見つけて、それを見つめながら過ごすのみです。

更新が更にゆ~~っくりになりますが、お付き合いいただけますと幸いです。
続く「今」をなんとか乗り越えましょう!



| サン・ジョルディの日 | 20:13 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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『バビロンの架空園』

植物に纏わるエッセイを集めたアンソロジー。

まずは 「フローラ逍遥」 と題された25の花に寄せる心の散歩だ。
水仙、椿、梅、菫、チューリップ、金雀枝、桜、ライラック、アイリス、牡丹、朝顔、苧環、向日葵、葡萄、薔薇、時計草、紫陽花、百合、合歓、罌粟、クロッカス、コスモス、林檎、菊、蘭……。

プリニウスの『博物誌』 からの引用も多く面白い。
なかなか読むことはないであろう本だから、お得感もあったりして。

琥珀については「ポプラや鳥の涙がメタモルフォーシスしたもの」という記述。
なんて素敵な想像力だろう。
鉱石みたいで、植物で、化石。
虫入り琥珀はタイムカプセルみたいだし、古代ギリシャでは「太陽の石」だった。
たしかに、「琥珀色のワイン」なんて書いてあると、うっとりしてしまう。
私にとっては、トカイワインがそれだ。

書名にもなっている 「バビロンの架空園」 は古代バビロニアの屋上庭園だ。
絶世の美女、セミラミス女王の伝説と相まって、甘い香りが漂ってきそうな気がする。
乾燥した大地にそびえる巨大庭園は噴水が水をたたえ、鳥が舞い、色とりどりの花が咲く……。

そんな想像を巡らせていると、お次は 『とりかへばや物語』マルキ・ド・サド の世界に突入する。
しっかり澁澤ワールドに浸かって読了できた。



| 澁澤龍彦 | 10:30 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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『マボロシの鳥』

好みが分かれると思う。
感性が合うかどうか。
先に、著者「爆笑問題」の太田光氏のエッセイ 『トリックスターから、空へ』 を読んでおいたのも良かったかもしれない。

テーマは「繋がり=愛」であること。
それを短編集として綴ったのが本作であると思う。

私が図書館でこの本を予約してから手に取るまで、8ヶ月程かかった。
発売当時、約200人待ちの大人気だったのだ。

それだけの、いや、それ以上の人の手を経てきたであろう本は、とても綺麗な状態だった。
読まなかった人もいるだろう。
途中で返却した人もいるだろう。
でも、そういう人も含めて「繋がっている」と感じた。

著者の描くように「繋がり」が「愛」ならば、この本の状態も愛なのだと。

繋がりを辿れば、私の住む地域だけの話ではない。
作家、編集者、デザイナー、出版社……書店、図書館、読者、読者、読者……。
海外で読む人もいるだろう。
もしかしたら、この先宇宙で読む人もいるかもしれない。

繋がりは愛おしさである、というのが作品全体を通して私が感じた事であった。
ただ、もう少し社会問題への傾きがぼかせればなぁと思うが、「ぼかしたら意味ないよ」という太田氏の言葉が返ってきそうだ。

装丁が内容を惹きたてていて魅力的。

この記事を読んでくださったあなたとも、繋がっている。
とても嬉しい事だ。




| ファンタジー・幻想 | 10:14 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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『歪み真珠』

山尾悠子が紡ぐ、バロック真珠の首飾り。
バロック真珠は歪みが魅力だ。凹凸が光を反射する。
そして、その個性は世界にひとつだけ。

「ゴルゴンゾーラ大王あるいは草の冠」
「美神の通過」
「娼婦たち、人魚でいっぱいの海」
「美しい背中のアタランテ」
「マスクとベルガマスク」
「聖アントワーヌの憂鬱」
「水源地まで」
「向日性について」
「ドロアテの首と銀の皿」
「影盗みの話」
「火の発見」
「アンヌンツィアツィオーネ」
「夜の宮殿の観光、女王との謁見つき」
「夜の宮殿と輝くまひるの塔」
「紫禁城の後宮で、ひとりの女が」


各作品のタイトルだけで美しい。
けれど、読みづらい。
その独特の世界観に入り込めたかな?と思うと、物語が終わってしまうものが多い。

「美神の通過」 のように、はじめにバーン=ジョーンズの絵画があって、それに物語をつけた……というのなら、とても面白いと思う。
イチから作者の想像の世界に入るのは、なかなか難しかった。

「ゴルゴンゾーラ大王あるいは草の冠」 は、荘厳さがユーモラスで愛おしい。
「マスクとベルガマスク」 の耽美さ。
退廃的な色がある 「アンヌンツィアツィオーネ」
「夜の宮殿の観光、女王との謁見つき」「夜の宮殿と輝くまひるの塔」 の「夜の宮殿」には想像力を掻き立てられる。

カテゴリを「ファンタジー・幻想」にしながら、「アート」の方がいいかもしれないと思った。
もし絵が描けたなら、それぞれの物語を描いてみたい。
そんな楽しみもあるのではないかと、読書の可能性が広がる気がした。



| ファンタジー・幻想 | 16:12 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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『BROOCH ブローチ』

私にとって、1月と2月は心がアンバランスになりがちです。
もう数年前から、ずっと。

ちょっとずつ、少しずつ、なんとか過ごしているつもりでいます。
けれど、気がつけば「ため息」が、ひとつ、ふたつ……。

ああ、良くないな。
でも、どうしようもない。

そんな時に出会った、この本に救われました。

溜め息をしすぎたら
深呼吸になった


ああ、そうか。
素直にそう思えて、たくさん、ため息をつくことにしました。

時には
わけがわからないくらいの方が
いまを味わえるのかもしれない


ああ、そうか。
また素直にそう思えて、ため息をついて、深呼吸。

小さな祈りを 胸にかざる


胸に手を当てて、小さく祈る。
そうしたら、ため息をつきながら淹れたコーヒーを飲もう。

それから、しゃきっと胸を張ってみよう。
また猫背になってしまったら、大好きな本に目を落とせばいいや。

これが、いまを味わう、っていうことかしら。



| 絵本 | 16:47 | comments:2 | trackbacks:0 | TOP↑

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