ちった図書室 ~Bibliothèque de Cittagazze~

手当たり次第に読んだ本を手当たり次第に記していこうという、意気込みだけは凄い図書室。目指すは本のソムリエです。

≫ EDIT

『ロカノンの世界』

<ハイニッシュ・ユニヴァース>第一作。

同シリーズの『闇の左手』や『所有せざる人々』を読んだ経験から、かなり身構えて読み始めたのだが……。
なんと若い!初々しい!かわいいこと!
ル=グウィンにも夢見る少女のような頃があったのね!と妙に感動してしまった。

しかし、そこはアーシュラ・K・ル=グウィン。
“西の善き魔女”の異名をとる作家である。

異なる世界の交流。
身分制度。
名前が持つ力。
友情。
そして、愛。

それらが強烈に胸を突く。


物語の始まりは、美しい奥方の夫への愛を描いた 「セムリの首飾り」 から。
それに次ぐ 第一章「星の君」第二章「さすらいびと」 が、ロカノンの物語だ。

舞台はフォーマルハウト第二惑星。
民俗学者のロカノンは、連盟より派遣された様々な分野の専門家たちと調査に訪れていた。
それぞれの研究成果を持ち帰ったまさにその時、彼らを爆撃が襲った。
失われたのは、かけがえのない仲間、調査結果、宇宙船……。

そもそも、フォーマルハウト第二惑星は極めてデリケートな位置づけにあった。
第一次のコンタクトで、文明の介入と取引があったのである。
それによって生じた懸念材料は、侵略者による惑星まるごとの略奪や奴隷化。

宇宙連盟の正式な管理下に置かれたなかでの、第二のコンタクトだったが、事態は遅きに失した。

ロカノンは償いと仲間の敵を取る為に、命と引き換えにしてもフォーマルハウト第二惑星を守ることを決意する。


「やつらの武器を奪って逆にやつらを攻撃してやりたい」


武器とは「アンシブル」という星間通信機。
座標を本部に伝えられれば、惑星へダメージを与える事なくピンポイントで殲滅させられる。

ロカノンは、調査中に心を通わせたハランの王子モギーンと共に南を目指す。
アンギャール族が駆るのは馬でなく「風虎」。
羽の生えた虎のような生き物だ。

『空飛び猫』の作者であり、大の猫好きのル=グウィンらしい発想だが、それのなんと魅力的なことか!
力強く羽を打つ音が聞こえてくるよう。
また、萩尾望都のカバーイラストがイメージぴったりで素晴らしい。

果てしなく、地図にもない「南」への旅。
そこにあるのは『ゲド戦記』第一巻を彷彿とさせる「無償の友情」だ。


読書中の感覚としては 『指輪物語』 に近い。
ドワーフのようなグデミアール族。
エルフのようなフィーア族。
騎士道を重んじるアンギャール。

しかし、根底に流れるのは確かにSFだ。
何より<ハイニッシュ・ユニヴァース>の幕開けとして、是非とも読んでおきたい一冊である。





| アーシュラ・K. ル=グウィン | 23:18 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

≫ EDIT

HUGっと!ふわふわモンスター ~サン・ジョルディの日2019

今年も サン・ジョルディの日 が近づいてまいりました。

4月23日は親しい人に本を贈り合う 「世界本の日」
毎年、私からのプレゼントとしまして「とっておきの一冊」をご紹介しています。

さて、平成最後のご紹介はこちら!


ケヴィン・クラッシュ/ゲイリー・ブロゼック
『アイ ラブ エルモ ~ My Life as a Furry Red Monster』


hugelmo


最高にハートフルで、抱きしめたくなるような一冊です。

私は「セサミストリート」に、小学生の頃からNHKでの放送終了まで親しんできました。

好奇心いっぱいのエルモ
明るい笑い声がかわいいゾーイ
ひねくれ者だけれど本当は優しいオスカー
クッキーへの自制心と欲望の狭間でユニークな表情を見せてくれるクッキーモンスター
数字が大好きで数を数えずにはいられないカウント伯爵
セサミストリートの案内役のようなビッグバード


なかでも、エルモは私に勇気をくれた特別なモンスターです。
エルモはよく "Elmo can do it !" と言って色々なことをやりたがります。

私はずっと自分の勇気のなさに悩んでいました。
色々やってみたい。
けれど、あと「一歩の勇気」がでない。

そんなある時、雑貨屋さんで見つけたエルモのポストカードを手帳に挟む様になってから、自分のなかに少しずつ「勇気」が蓄積されていきました。
"Elmo can do it !"が"I can do it !"になって、今ではスキップするように好奇心いっぱいで一歩がでるようになりました。
やってみなけりゃ分からない!

そのお蔭で経験できたことが、沢山あるように思います。


『アイ ラブ エルモ ~ My Life as a Furry Red Monster』

ブックレビューでは、また違う魅力をご紹介していますので、どうぞご覧くださいね。





エルモの歌
歌も分け合っちゃう優しさと楽しさ!
因みにこの大きい毛むくじゃらの子はスナッフィー。
マンモスですよ~。




カワイイ

と虜になってしまったらこちらをどうぞ。
オススメ!



| サン・ジョルディの日 | 16:10 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

≫ EDIT

なぞり書きはディナーのあとで

文字を書くのはお好きですか?
PCのキーを叩くのではなく、文房具で書くことを。
私は大好き!

そのひとつが、なぞり書き。

『えんぴつで奥の細道』が注目を集めてだいぶ経ちますが、シリーズはちゃんと続いています。
その「えんぴつでシリーズ」のなかでも『えんぴつで万葉集』が大好きで2冊目に突入しました。
1冊目はえんぴつで。2冊目は万年筆で書いております。

「万葉集」は何度書いても飽きないのです。
なんだこの「ただのつぶやきは」「この人ナンパばっかりしてるな」などと笑うも良し。
歌聖、柿本人麻呂の凄さを味わうも良し。
防人に単身赴任の切なさを感じるも良し。

一番は「人間って変わらないなあ」ということ。
その時その時の生活の営みに対する悲喜こもごもに、愛おしさを想います。

新元号【令和】には、変わらぬ日常の大切さと、一人一人への平和の願いを真っ直ぐに感じました。

大迫閑歩氏の字体も好きです。
これは好みがありますから、気になる方は現物やネットで字体をご覧になってからの方がいいかも。

以前放送された 【100分de名著】 のテーマが「万葉集」でした。
面白くてすぐにテキストを購入しました。

これを機に「書きながら読んで」みてはいかがでしょう?
夜にゆっくりと……が、オススメ。

私は更に『えんぴつで枕草子』をなぞってます。
楽しい!


  


他にも色々。
簡易版は、ちょっと書きづらいかも……。
下敷きを思いっきりガッと入れましょう!ガッと!!


| コラム | 22:52 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

≫ EDIT

『この闇と光』

その神はよいもの、気高いもの、父らしいもの、美しいものであり、高いもの、多感なものでもある。

                      ヘルマン・ヘッセ 『デミアン』より



これは盲いたお姫様の、美しくも残酷な物語……。

ある処に、囚われのお姫様がおりました。
名前はレイア。
国が戦争で敗けてしまったので、王であるお父さまと共に虜の身となりました。

お父さまはレイア姫を「光の姫」と呼んで慈しみ、色々なことを教えて下さいます。
だから難しいお話も、恐ろしい隣国のことばも分かります。

そして、いつもこう仰るのです。

「おまえは王女様、世界で一番美しいレイア姫」

姫が嫌いなのは沈丁花。
レイア姫を憎んで殺そうとする、ダフネと同じ香りがするから。

でも、お父さまが一緒だから大丈夫。

「おまえは王女様、世界で一番美しいレイア姫」

呪文のように繰り返されるこの言葉。

「おまえは王女様、世界で一番美しいレイア姫」

呪詛のように繰り返されるこの言葉。

お父さまの元、美しい音楽や美しい物語と共に成長したレイア姫。
……ですが、ある日突然に平穏な日々は終わってしまいます。


お父さまと過ごした危うくも優しい日々。
その後の日々。
レイアの生活は、スピノザの『エチカ』を連想させた。
困難な状況を乗り越えたレイアがどんな大人になるのか私には想像できないけれど、幸せであればいいと思いながら本を閉じた。





| 服部まゆみ | 14:13 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

≫ EDIT

『歌おう、感電するほどの喜びを!』 (新版)

タイトルが素敵だ!!
(原題"I SING THE BODY ELECTRIC!")

「うーん、分からん」と思ったり、「これ好き!」だったり、「やけにパキっとしてるなぁ」と思ったり。
ヘミングウェイとディケンズへのリスペクトだったり。
とにかく色々詰まった18編。


「キリマンジャロ・マシーン」
「お邸炎上」
「明日の子供」
「女」
「霊感雌鶏モーテル」
「ゲティスバーグの風下に」
「われら川辺につどう」
「冷たい風、暖かい風」
「夜のコレクト・コール」
「新幽霊屋敷」
「歌おう、感電するほどの喜びを!」
「お墓の引越し」
「ニコラス・ニックルビーの友はわが友」
「大力」
「ロールシャッハのシャツを着た男」
「ヘンリー九世」
「火星の失われた都」
「救世主アポロ」



琴線に触れる物語は読んだ人全員が違うだろうと思う。
この本を中心に色々な読み方、感じ方、解釈を話し合うと面白そう。

私のイチオシは 「ロールシャッハのシャツを着た男」
も~、幸せの大盤振る舞い!

それにしても、「霊感雌鶏モーテル」 のわけの分からなさよ……。





| レイ・ブラッドベリ | 01:21 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

| PAGE-SELECT | NEXT